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試用期間中に、試用期間の延長を会社から求められた。延長は可能ですか?

法律・制度

試用期間中に、試用期間の延長を会社から求められた。延長は可能ですか?

基本的には、特別な理由がない限り、会社が一方的に試用期間の延長をすることはできません。

試用期間の延長は、会社にとってはリスクを減らす行為ですが、労働者にとってはリスクが増えてしまう行為だからです。

試用期間とは?

試用期間は、会社が人材を採用する際に、社員としての適性(勤務態度、能力、スキル)を評価判断するために用いられています。

期間の長さについては、労働基準法などで明確な定めはありませんが、1〜6カ月が一般的で、最長1年が限度と解釈されています。

採用段階では新入社員の能力を十分に把握することは難しいので、この期間中に実際に働かせてみて、業務への適性を判断するというわけです。

試用期間が経過して、問題なく働けると会社から認められれば、本採用ということになります。
逆に、残念ながら従業員として不適当ということになれば、雇用契約はそこで終了となります。

判例上、本採用を拒めるのは、試用中の勤務状態から判明した事実に照らし、引き続き雇用しておくのが適当でないと判断することが「客観的に相当」である場合に限られています。

この「客観的に相当」というハードルは相当に高いもので、よほどのことがない限り、本採用は拒否できないと考えてよいでしょう。

有給休暇や社会保険はいつから対象になる?

試用期間も有給休暇の計算に含まれる

年次有給休暇取得の要件である「6ヵ月以上の継続勤務」の中には試用期間もカウントされます。

試用期間を含めて6ヵ月以上継続して勤務しており、かつ全労働日の8割以上の出勤があれば有給休暇を取得することができます。

試用期間はあくまでも会社側の解約権が留保された「労働契約」であり、社員として勤務していることに変わりないからです。

試用期間も社会保険の加入は必要

「試用期間中は社会保険へ加入させる必要がない」と誤解されがちですが、これは違法です。

労働契約が締結されている状態ですから、以下の加入条件を満たしていれば、入社時点から各種社会保険(雇用、健康、労災、厚生年金)に加入させなければなりません。

雇用保険

1週間の労働時間が20時間以上、かつ31日以上雇用される見込みがある場合、雇用保険への加入が必要です。

たとえ最初の契約で雇用期間が31日に満たない場合でも、契約を更新して雇用期間が31日を超えた時点で、雇用保険へ加入させなければなりません。

健康保険・厚生年金保険

法人、または常時従業員が5人以上の個人事業所に雇われている場合、基本的に被保険者となります。

パートやアルバイトでも、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、同じ会社で働く正社員の4分の3以上あれば、被保険者となります。

※この基準を満たさなくても、以下の5つの条件を満たしている場合には、被保険者として扱われます

  1. 従業員501人以上、または500人以下の会社で社会保険加入を労使で合意した会社
  2. 1週間の所定労働時間が20時間以上
  3. 継続して1年以上の雇用期間が見込まれる
  4. 賃金月額が88,000円以上
  5. 学生ではない

労災保険

労災保険の適用事業所(基本的に労働者を使用していれば労災保険への加入は義務付けられています)で働き、賃金を支払われているすべての労働者が適用対象です。

正社員はもちろんのこと、パートやアルバイト、派遣労働者であっても労災保険の適用を受けます。

本採用にならなかった場合、どうなる?

試用期間途中での突然の解雇通告

会社側は正当な理由がない限り簡単に解雇はできません。

正当な理由として、過去に裁判で認められた解雇の具体例は以下のようなものです。

  • 出勤率が90%に満たない
  • 3回以上の無断欠勤
  • 勤務態度が悪く、何度指摘しても改善されない
  • 協調性を欠く言動・行動があり、社員として不適格
  • 経歴詐称があった

経歴詐称以外の理由では、雇った会社側にも教育や指導をする義務がありますので、上記のような理由に該当するからといって、いきなり解雇することはできません。
会社が十分に教育や指導を行ったかも重要な判断材料となります。

解雇通知に関しても、通常の解雇と同じく30日前に予告するか、代わりに30日分以上の平均賃金を支払うことが義務付けられています。

ただし、試用期間が始まって14日以内の解雇であれば、いずれの義務も果たさなくて良いという特例があります。

試用期間終了後に、本採用を拒否された

本採用拒否は、法的には労働契約の解約にあたり、解雇に該当するため、正当な理由が必要です。

もしも試用期間満了時に「今回の本採用は見送ります」と、あたかも会社側に選択権があるような言い方をされたら、法的には認められないということを知っておいてください。

これらのトラブルに遭遇してしまったら、行政庁や弁護士に相談することも考えられます。

現実問題としては、弁護士に相談する段階までいくと、訴訟から未払い賃金の支払いにいたるまで相当な時間とコスト、精神的負担がかかってしまいますが。

試用期間中に退職できる?

試用期間中、「実際に働いてみたらイメージと違った」と自分が感じる場合はどうすれば良いのでしょうか。

労働基準法では、退職予定日の2週間前に申し出を行うことが定められています。
退職の意思が固いようであれば、会社側もあなたの後任者が必要になるので、なるべく早めに、直属の上司に伝えるようにしましょう。

仕事内容を入社前にしっかり確認していても、入ってみると違和感を持つことがあるかもしれません。
自分から周囲へ働きかけるなど、まずは状況を変える努力をしてみるのも大切かと思います。

しかし、現実の仕事内容があまりにも想像と異なり解決も難しい、退職したい、という場合は、その仕事をしている人たちを立てつつ、退職の意思を伝えるほうがいいでしょう。

試用期間を延長すると会社に言われたら

いったん「3か月」など決められた試用期間を延長するには、契約や就業規則などで、それが可能であることが定められている必要があります。
入社の際には内容をしっかり確認しましょう。

また、そのような定めがあったとしても、延長には合理的な理由が必要であると述べた裁判例もあります。

たとえば、無断欠勤や同僚とのトラブルが頻発するなど、深刻な問題があるならまだしも、「ミスが多い」というだけで試用期間が延長されるのは、合理的とは言えません。

労働法の知識のない経営者の中には、試用期間の間はいつでも解雇ができる、試用期間の延長も自由に会社が決定できると勘違いしている人がいますが、これも大きな間違いです。

日本の労働法はこのように、たとえ試用期間中でも、一度雇い入れられた人は「労働者」として手厚く保護されるようになっています。
安心して、仕事に邁進してください。