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出張に行く場合、移動中は労働時間になりますか?

2018年03月20日

出張に行く場合、移動中は労働時間になりますか?

「出張に関する移動時間」は、広い意味では会社の指揮・命令下で行動する時間ともとれますが、単に移動するのみであれば業務との関連性が低いため、労働時間に含まれないことが通常です。

出張とは?

出張とは、法律上の定めはありませんが、一般的には、使用者に命じられた業務を処理するために、その指揮命令のもとに通常の勤務地以外で労務することをいいます。

たとえば、大阪に所在する事業場に毎日出勤する労働者が、日帰りまたは宿泊して九州に所在する得意先へ赴く場合など、イメージがしやすいです。

自宅からいったん出社して、その後九州へ出向き、仕事を終了して自社に帰社して、その後帰宅するという場合、自宅から自社への往復は通勤であり、自社から得意先への往復が出張といえます。

長期の出張の場合、出張と言える期限はあるか?

会社で「長期出張」の命令が下された場合、「転勤」に近いような気がすると感じるかもしれません。

どちらも長期に渡って、現在勤務している環境とは異なる場所に身を移して仕事をする形態ですが、規定が異なります。

それは「自分の所属している部署や上司が変わるかどうか」です。例えば、長期出張で遠方にある自社の支社に赴き、一定期間勤務することになった場合、もともと所属していた本社の社員としての肩書きも、上司も変わることはありません。一方で、同じ支社へ転勤となった場合には、その支社の社員になる必要があるため、本社での肩書きもなくなり、上司も変わります。

また、長期出張はあくまで出張なので、出張旅費規程に基づいて日当が支給されるのが一般的です。

一方で、転勤は当然、出張手当のようなものは支給されません。しかし、転勤手当として、引越し費用や転勤先での生活必需品などを購入するのに必要なお金が支給されるケースもあります。

休みなどのルールが所属している場所と出張先が違う場合はどこに合わせる?

では、通常の勤務地と出張先で労働時間などのルールが違う場合、出張者にはどの就業規則が適用されるのでしょうか?

本社に所属している社員が出張した場合に、先に述べたように出張期間中の身分関係や賃金の支払い関係は変わりませんので、業務遂行の場所が一時的に移ったに過ぎず、本社の就業規則が適用されることとなります。

仮に出張先の始業時刻が8時、本社の始業時刻が9時だとした場合、始業時刻の違いによる1時間については早出として処理されることになります。したがって、出張先において時間外労働をすれば、当該時間外労働について本社の就業規則(あるいは賃金規程等)に基づき、割増賃金を支払い、あるいは本社の所定休日に出張先で労働した場合については、本社の就業規則で定められた休日出勤の規定に従って取り扱いをしなければならないことになります。

ただし、出張時の労働時間については、出張が事業場外労働のひとつになることがあるので、「事業場外みなし労働時間制」を適用するケースも多いです。

これは「労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときは、所定労働時間労働したものとみなす」と労基法で定められているもので、例えば営業で一人で出張する場合は、労働時間管理が難しく、業務の遂行に通常必要な時間を、「労働したものとみなす」とできます。

しかしこれはあくまでも「事業場外」「算定しがたい」ときとされているので、出張に管理者が同行している場合や、出張先が例えば工場のような場合で管理者から具体的な指揮命令を受けられる場合には「みなし労働時間制」の適用対象とはならず、前述のように時間外労働手当が支給されることになります。

出張先への移動時間は、労働時間にあたりますか

出張先への移動時間は、労働時間にあたりますか

出張の際の往復の移動時間が労働時間に該当するかどうかについては、通勤時間と同じ性質のものであって労働時間でないとする一方、移動は出張に必然的に伴うものとして労働時間であるとするものもみられます。

「労働時間」とは、使用者の指揮命令下にある時間のことです。労働時間には実際に作業している時間だけでなく、作業の間の待機している時間(手待ち時間)も含まれます。例えば、貨物の積み込み係が貨物用自動車の到着を待っている時間なども労働時間であるとされています。

これに対して、出張の際に公共交通機関を利用して移動する場合、これらに乗車中の時間について特別な指示が無い限り、原則として労働時間として扱わなくても違反とはなりません(出張の目的が物品の運搬自体であるとか、物品の監視等について特別の指示がなされている場合には、使用者の指揮監督下にあるといえますので、労働時間に含まれると考え、時間外労働や休日労働となります)。

移動の間は、週刊誌やスマホをいじったり、ビールも飲むことができる自由時間であり、指揮命令下にないからです。ですが、このように出張による交通機関の利用の場合には、拘束時間が長くなるので、その拘束時間の代価としての手当(出張手当、日当)を支給する企業も多くあります。

では、移動が公共の交通機関ではなく、会社の有する車両を使った場合はどうなるでしょうか。例えばそれが、

  • (1)得意先へ製品を届けるため車両を使って運搬する、という場合には「労働時間となります」が、
  • (2)単に交通機関として社有車を利用して移動する、という場合は、運転による心身の疲労があるとしても、「労働時間としなくてもいい」とされています。

後者の場合は、たとえ自ら運転したとしても、その時間を自由に利用することができるという考え方からです。

ただし、現実の場面では、両者の区別があいまいな場合も多いため、実態に即して判断されるでしょう。

出張中の休日は、労働日として認められますか?

出張中の休日は、労働日として認められますか?

出張日程の途中に休日がある場合や、休日が移動日に当たる場合、その当日に用務を処理すべきことを明にも暗にも指示されていない限り、その当日も休日として取り扱われます。 先に述べたように、用務の指示を受けていなければ使用者の指揮命令下にある時間=「労働時間」にはならないからです。

月曜日の朝からの会議のために、前日の休日に用務先に出張しても休日労働に該当しないし、用務先で業務終了後夜行列車に乗車し深夜に帰着したとしても時間外労働にはなりません。

出張中の交通事故などは労災として認められますか?

労災保険法では、「業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害又は死亡」に関して保険給付を行うこととしています。

出張の場合は、事業主の管理下を離れ出張者の個々の行為について事業主の直接的な指揮監督を受けるものではありませんが、用務遂行のため事業主に対する責任を負い、出張の全過程において労働契約に基づき事業主の命令を受けて仕事をしていると言えます。

そのため事業主の支配下にあると判断され、仕事の場所はどこであっても、業務災害について特に否定するべき事情がない限り一般的には業務災害と認められます。

また、「海外出張」の場合も国内での出張と同様に、積極的な私的行為によって災害が発生したものでない限りは、一般の労災保険が適用されます。

ですが、泥酔して階段から転落したり、私的に映画を見に行ってその帰りに事故に遭うなど、積極的な私的行為を行い、自ら招いた災害は業務上とは認められず、こういった場合には労災保険の給付を受けることはできません。

本文の内容は執筆時点のものです。その後の法改正などは反映しておりません。