パート・アルバイトのメリットとは?労働法との関係も解説
働き方の多様化する今、フルタイムでなく短時間や短期間でのパート・アルバイトという勤務形態で働く人も大勢います。
パート・アルバイトにはどんなメリットがあり、どのような注意点があるでしょうか。
この記事では、パート・アルバイトのメリットと注意点を、働く側と雇う側それぞれの視点から紹介します。さらに、パート・アルバイトに関する労働法についても解説します。
目次
パート・アルバイトで働くメリットと注意点
パート・アルバイトで働くメリット
パート・アルバイトの最大のメリットは、自分で働く時間をコントロールできることです。
勤務はシフト制である場合が多く、働きたい曜日・時間帯・休日の希望をもとにシフトが組まれるので、フルタイムより柔軟に自分のライフスタイルに合わせて働くことができます。
勤務日数や時間を自分で調整できるため、学業の合間に収入を得たい学生や、諸事情でブランク期間があり少しずつ職場復帰を目指す方、子育てや家事と仕事を両立したい主婦(夫)の方に向いています。
求人の多さと比較的採用されやすいという点もパート・アルバイトの魅力の一つです。
仕事の内容は未経験でも可能な補助的・簡易的な仕事が多く、選考に関しても正社員ほど厳しくはありません。
パート・アルバイトでも、正社員並みの高いスキルで働ける人は、パートタイム・有期雇用労働法において同一労働同一賃金が保証されます。
また、転居を伴う異動や転勤はない場合が多いので、今の生活圏を変えたくない方や介護など家庭の事情により転勤が難しい方にとってもメリットのある働き方です。
パート・アルバイトで働く時の注意点
パート・アルバイトの給料は基本的に時給制なため、収入は安定しません。
働いたら働いただけ稼ぐことは可能ですが、逆に休めば休んだ分の収入は減ります。
常に希望通りにシフトが組まれるわけではなく、閑散期やコロナ禍のような社会情勢によっては、シフトの時間が削られて働きたくても働けなくなるリスクもあります。
正社員に比べて社会的信用度が低い傾向にある点も注意が必要です。
非正規雇用で収入が安定しないため、クレジットカードや住宅ローンなどの審査が通りにくくなります。
また、パート・アルバイトは仕事での権限もあまり与えられず実績になるような業務を担当できないことが多く、転職の場面でも不利になってしまいます。
パート・アルバイトは、いざという時には正社員が助けてくれるという安心感もありますが、なんの責任も持たなくて良いということではありません。
遅刻をしない、勤務時間内は上司の指示に従って誠実に仕事をする、といった当たり前のことはもちろん、会社の備品を私用で使わない、個人情報や社外秘などを漏らさない(守秘義務)などの基本的なルールを守る責任感は、パート・アルバイトで働く際にも必要です。
企業がパート・アルバイトを雇うメリットと注意点
パート・アルバイトを雇うメリット
企業にとってパート・アルバイトを雇う最大のメリットは、業績や繁忙期・閑散期などに合わせて働いてもらう時間を調整できることです。
時間単価も正社員と比べて低いので、全体の人件費を抑えることもできます。
パート・アルバイトに正社員の業務の一部を切り分けることで、正社員の労働時間や負担が軽減されたり、より責任の大きい業務に注力することが可能となります。
また、正社員登用制度を利用して有能なパート・アルバイトを正社員へ転換すれば、即戦力としての活躍が期待できるだけでなく、求人・採用・教育にかかるコストや手間を省くこともできます。
パート・アルバイトを雇う時の注意点
パート・アルバイトで働く人は、学業や子育て、介護など、仕事よりも優先するものがある人が多い点に注意が必要です。
テスト期間や就職活動、子供の怪我や病気、持病の悪化など、休み希望の偏りや急な欠勤が発生する場合があります。
学生の卒業に伴う退職など、定期あるいは不定期で従業員の入れ替わりが発生します。
そのたびに求人を出して新たな人員を一から教育し直す必要があるため、中長期的な人材の育成が難しく、人手不足の根本的な解決にはなりません。
どうせ辞めてしまうから、とパート・アルバイトの教育を疎かにしてしまうと、モンスターアルバイトによるバイトテロ(おふざけ行動を撮影した動画をSNSなどに投稿し、不適切動画として炎上する被害)を引き起こし、重大な損失を被る危険があります。
当人のモラル意識だけに頼るのではなく、リスクを事前に回避するための従業員教育が大切です。
また、人手不足を理由とした無理なシフトなど過剰な要求は、従業員のモチベーションを下げるばかりかブラックバイトになりかねません。
ブラックバイトとは、長時間労働やサービス残業、シフトの強制、急な呼び出し、ワンオペなど、従業員の事情に配慮しない労働を強いたり、パート・アルバイトの低い待遇のまま正社員並みの業務やノルマ、責任を押し付ける悪質なもので、違法性の高い労働環境として問題視されています。
パート・アルバイトは、学生や主婦(夫)、高齢者など様々な人がそれぞれの事情を抱えています。
日頃から従業員とのコミュニケーションを図り、働く人にとって良い環境を整え、相互の信頼関係を築いていくことが重要です。
知っておきたい!パート・アルバイトと労働法
労働法とは、労働問題に関する様々な法律をひとまとめにした呼称です。
労働法の保護を受ける労働者とは、雇われて働くすべての人を指します。
正社員だけでなく、パート・アルバイトも労働者として労働法の適用を受けます。
したがって、パート・アルバイトでも残業代などの割増賃金が支払われることはもちろん、要件を満たしていれば年次有給休暇の取得や雇用保険・社会保険への加入も適用されます。
労働法とパート・アルバイトの雇用ルールについて、以下で詳しく見ていきます。
労働基準法
契約期間
使用者(企業)がパート・アルバイトを含む労働者を有期契約で雇う(期間の定めのある労働契約を締結する)場合、その雇用契約期間は最長で3年間という上限が定められています。
ただし、60歳以上の高齢者や一定の高度専門知識労働者に関しては、雇用契約期間の上限は5年間です。
有期契約では、使用者・労働者の双方に契約期間を守る義務があります。
たとえば1年間の労働契約を結んだ場合、労働者が期間中に退社すると債務不履行になり、使用者も1年の契約期間中は解雇できません。
労働条件の明示
使用者が労働者と労働契約を締結する際には、「労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示」することが義務付けられています。
明示しなければならない事項
- 労働契約の期間
- 仕事をする場所、仕事の内容
- 勤務時間、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、交替制勤務の場合のローテーション
- 賃金の決定、計算と支払の方法、締切と支払時期
- 退職に関すること、解雇事由
解雇の予告
使用者が労働者の解雇を行う場合、30日前までにその予告をするか、30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払う義務があります。
たとえ週1日出勤のパート・アルバイトであっても、解雇予告をしない場合は最低30日分の解雇予告手当が必要です。
解雇事由を明示していても、客観的・合理的な理由に欠ける場合、その解雇は無効となります。
「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」や、「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」でも、労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けていなければ、労基法第20条違反で罰則(六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金)があります。
賃金の支払い
賃金の支払いは、「通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければなら」ず、「毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」とされています。
パート・アルバイトの無断欠勤やノルマ未達成に対し、罰金として給与から天引きされるケースがありますが、これは労働基準法に違反しています。
労働時間
労働時間については、「休憩時間を除き一週間について40時間を超えて、労働させてはならない」、「休憩時間を除き一日について8時間を超えて、労働させてはならない」と定められています。
パート・アルバイトもこの法定労働時間を超えて働くことはできませんが、変形労働時間制を利用することで、忙しいときは長く、暇なときは短く、といった効率的なシフトを組むことができます。
休憩・休日
休憩時間は、「労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間」を与えることが義務付けられています。
短時間勤務のパート・アルバイトで、労働時間が6時間以下になる場合は、休憩時間がなくても違法ではありません。
また、休日に関しては「毎週少なくとも1回」あるいは「4週間を通じ4日以上」が法定休日として定められています。
36協定と割増賃金
36協定(時間外労働・休日労働に関する労使協定)を締結して労働基準監督署に届け出ることで、1日8時間・週40時間の法定労働時間を超える労働や休日の労働が可能となります。
ただし、18歳未満の年少者は法定労働時間を超えて勤務させてはならず、原則として、時間外・休日・深夜(22:00〜05:00)の労働は禁止されています。
原則
時間外労働上限:月45時間以内かつ年360時間以内
特別条項付き36協定の場合
- 時間外労働上限:年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計:月100時間未満
- 時間外労働の月45時間超:年6ヶ月まで
- 時間外労働と休日労働の複数月平均:80時間以内
法定時間外や深夜の労働、休日出勤には割増賃金の支払いが必要です。
パート・アルバイトももちろん例外ではありません。
割増賃金率 | 割増賃金率 |
---|---|
時間外労働 | 25% |
法定休日労働 | 35% |
深夜労働 | 25% |
時間外労働+深夜労働 | 25%+25%=50% |
休日労働+深夜労働 | 25%+35%=60% |
月60時間を超える時間外労働には、50%増し以上の賃金の支払いが必要です。(中小企業は2023年4月から適用)
パート・アルバイトのシフトで、通常の時間帯と深夜労働にあたる時間帯を通して勤務する場合は、それぞれ別に時給を設定する必要があります。
有給休暇
使用者(企業)は、「雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者」には有給休暇を与える義務があります。
パート・アルバイトなど週1〜4日勤務の短時間労働者にも、比例付与という形で有給休暇は与えられます。
週所定 労働日数 |
年所定 労働日数 |
勤続年数 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6ヶ月 | 1年 6ヶ月 |
2年 6ヶ月 |
3年 6ヶ月 |
4年 6ヶ月 |
5年 6ヶ月 |
6年 6ヶ月 |
||
4日 | 169日 ~216日 |
7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121日 ~168日 |
5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73日 ~120日 |
3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48日 ~72日 |
1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
付与される有給休暇が10日以上あれば、使用者はパート・アルバイトに対しても年5日の年次有給休暇を取得させる義務があります。
有給休暇は利用目的を問われることなく、原則として労働者が請求する時季に与えられます。
年次有給休暇を取得したパート・アルバイトの賃金を減額したり、年次有給休暇の取得日を欠勤にするなどの不利益な取扱いをしてはなりません。
パートタイム・有期雇用労働法
正式名称:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
パート・アルバイトは、正確にはパートタイム労働者(短時間労働者)の位置付けになり、法律上ではパートとアルバイトの区別はありません。
パートタイム労働者とは、同じ事業所に雇用されている通常の労働者(正社員などフルタイムで働く労働者)と比べて、1週間の所定労働時間が短い労働者を指します。
パートタイム・有期雇用労働法は、パートタイム労働者・有期雇用労働者の公正な待遇の実現を目的として、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差を禁止する改正が行われました。
その改正部分は2020年4月1日に施行され、中小企業には2021年4月1日から適用されます。
労働条件の明示
労働基準法に定められた明示すべき労働条件の項目に加え、事業主(企業)がパート・アルバイトを雇い入れた時には、昇給の有無・退職手当の有無・賞与の有無・相談窓口の4項目を明示することが義務付けられています。
初めて雇い入れた時だけでなく、労働契約の更新時にも明示する必要があります。
不合理な待遇差の禁止
同じ企業で働く正社員と非正規社員との間のあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されました。
業務内容や責任の程度、転勤・人事異動・昇進などの有無や範囲が、正社員と同じパートタイム労働者・有期雇用労働者については、基本給・賞与・各種手当・福利厚生・教育訓練などの待遇で差別的取扱いをしてはならないと定められています。
正社員と非正規社員とで待遇に差がある場合、その差が働き方や役割の違いに応じた合理的なものであると説明できなければなりません。
パート・アルバイトだから、将来の役割期待が異なるから、という理由では主観的・抽象的なため待遇差の説明にはならず、不合理な待遇差であると判断されます。
説明義務の強化
事業主は、パートタイム労働者・有期雇用労働者から求められた場合、正社員との待遇の違いと理由、決定に当たって考慮した事項について説明する義務があります。
基本給や賞与、手当など待遇の決定基準に違いはあるのか、どのように違うのか、なぜ違うのか。
教育訓練や福利厚生施設を利用できる(できない)のはなぜか。
正社員への転換推進措置はどうなっているか。
など
説明を求めた従業員に対して、解雇や減給などの不利益な取り扱いは禁止されています。
裁判外紛争解決手続の整備
不合理な待遇差や内容説明などで対立した時、裁判外紛争解決手続 (行政ADR)の対象として、都道府県の労働局から早期解決のための支援を受けることができます。
相談は非公開かつ無料で、必要に応じて事業主に対する助言や指導、紛争解決の手伝いをしてもらえます。
また、パート・アルバイトが行政ADRの援助を求めたことを理由に、事業主がその従業員を解雇するなどの不利益な取扱いは禁止されています。
その他の労働法
労働基準法とパートタイム・有期雇用労働法の他、パート・アルバイトに適用される労働法は様々です。
なかでも、パート・アルバイトの雇用で見落とされがちなルールを解説します。
最低賃金
最低賃金法によって、企業が支払わなければならない賃金の最低額が定められています。
地域別最低賃金は都道府県ごとに決まっており、雇用形態や年齢・性別にかかわらず、すべての労働者に適用されます。
パート・アルバイトの試用期間・研修期間中であっても、定められた最低賃金を下回る賃金で働かせることはできません。
健康診断
原則として、無期契約もしくは1年以上の継続雇用が見込まれる有期契約で、正社員の週所定労働時間の4分の3以上働くパート・アルバイトには、健康診断を実施しなければなりません。
同じく無期契約もしくは1年以上の継続雇用が見込まれる有期契約で、正社員の週所定労働時間の2分の1以上4分の3未満で働くパート・アルバイトに対しては、健康診断の実施が望ましいとされています。
雇用保険
パート・アルバイトでも、1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上雇用される見込みのある場合は、雇用保険加入の対象となり、企業は加入手続きを行う義務があります。
労災保険
一人でも人を雇った場合には、企業は必ず労災保険に加入しなければなりません。
雇っている人数や期間・労働時間に関係なく、1日だけの短期アルバイトも含め、労災保険の加入はすべての労働者を対象としています。
社会保険(健康保険・厚生年金)
パート・アルバイトでも以下の5つの要件をすべて満たせば、社会保険に加入する義務があります。
- 1週間あたりの所定労働時間が20時間以上
- 1ヶ月あたりの所定内賃金が88,000円以上
- 雇用期間の見込みが1年以上
- 学生でない(夜間・通信・定時制の学生は加入対象)
- 従業員数が501人以上の会社(特定適用事業所)または従業員数が500人以下で社会保険加入の際の労使合意がある会社で働いている
掛け持ちで2ヶ所以上の事業所で働いている場合は、労働時間や賃金は合算せず、それぞれの事業所ごとに加入要件を満たすか判断されます。
社会保険の加入は任意で選べるものではないので、加入したくない場合は労働時間を抑えて要件を満たさないようにする必要があります。
まとめ
パート・アルバイトは、働く人にとっても雇う企業にとってもメリットのある雇用形態です。
そのメリットを活かして従業員が生き生きと働ける環境を整えるには、従業員と企業の双方が労働法への理解を深めるとともに、相互の協力によって正しく法令を守ることが大切です。
パート・アルバイトの勤怠管理には「CAERU勤怠」
参考:
労働基準法( 昭和22年04月07日法律第49号) – 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73022000&dataType=0&pageNo=1
パートタイム・有期雇用労働法周知リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/000473038.pdf
「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000470304.pdf
最低賃金制度の概要
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-09.htm
パートタイム労働者の健康診断を実施しましょう!!
https://www.lcgjapan.com/pdf/lb09094.pdf
事業主の皆さまへ 労働保険への加入について
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/hoken/leaflet.html
雇用保険制度
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koyouhoken/index_00003.html
パート・アルバイトの皆さんへ社会保険の加入対象が広がっています。-政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201607/2.html