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労働安全衛生法違反にならないためにはどうすればいい? 〜送検事案に見る違反の実態 その2〜

法律・制度
労働安全衛生法違反にならないためにはどうすればいい? 〜送検事案に見る違反の実態 その2〜

前回の記事(『労働基準法違反にならないためにはどうすればいい?〜送検事案に見る違反の実態 その1〜』)では、2023年2月28日に厚生労働省のホームページで公開された「労働基準関係法令違反に係る公表事案」に関して、労働基準法および最低賃金法の違反事案について見ました。

今回は、公表件数も多い労働安全衛生法の違反について見ていきます。

労働基準関係法令違反に係る公表事案

『労働基準関係法令違反に係る公表事案(令和4年2月1日~令和5年1月31日公表分)』
https://www.mhlw.go.jp/content/001064405.pdf

上記の資料では、都道府県ごとに事案がまとめられていますが、どの都道府県が多い・少ないなど件数だけを見ても意味はありません。数字の大小が問題ではないからです。

労働安全衛生法に関して、

  • 死亡重篤な後遺障害を残す重大な労働災害を発生させた
  • 労働者死傷報告の不提出や虚偽報告(いわゆる「労災かくし」)をした

など、労働基準監督官が調査を行って重大・悪質な事案と認められた場合、司法処分(送検)されます。

送検された中でも比較的軽微なものや従業員本人の意向等により公表しないケースもあるため、送検された全ての事案が公表されているわけではありません。

では、公表された労働安全衛生法の違反事案を見る上で重視すべきことは何でしょうか。
それは、何が原因で労働災害が発生し、何をもって送検されるに至ったのか、つまりは何をした(しなかった)ことが違反の要因であるか、ということです。

「労働基準関係法令違反に係る公表事案」にある違反法条と事案概要をエクセルシートにまとめましたので、ご参考ください。
(以下のリンクよりダウンロードが可能です)
ダウンロード:「労働基準関係法令違反に係る公表事案」違反法条・事案概要まとめ.xlsx

それでは、実際に送検された事案を詳しく見てみましょう。

労働安全衛生法の違反

事業者の講ずべき措置等に関する違反

公表された事案の中で、労働安全衛生法の違反は全体の約8割を占めています。
中でも労働安全衛生法第20条・第21条の「事業者の講ずべき措置等」に関する違反が合わせて185件と最多です。

(事業者の講ずべき措置等)
第二十条 事業者は、次の危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。
 機械、器具その他の設備(以下「機械等」という。)による危険
 爆発性の物、発火性の物、引火性の物等による危険
 電気、熱その他のエネルギーによる危険

第二十一条 事業者は、掘削、採石、荷役、伐木等の業務における作業方法から生ずる危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。
 事業者は、労働者が墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所等に係る危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。

《実際に送検された事案概要の例》

  • フォークリフトに積んだパレットに労働者を乗せ作業をさせ、フォークリフトをその用途以外に使用させた
  • ローラーの運転者が運転位置を離れるとき、逸走※※を防止する措置を講じさせなかった
  • 引火性の油類を除去せずに配管の溶断作業を行わせた
  • 立木の伐木作業に従事する労働者に保護帽を着用させなかった
  • 高さ2メートル以上の箇所で作業を行わせる際に、墜落防止措置を講じていなかった

※パレット・・・まとめた貨物を置くための面があり、荷役・輸送・保管が可能な構造のもの
※※逸走・・・車両が走行すべきでない軌道区間へ進入し走行してしまうこと

「このくらいなら大丈夫だろう」との油断怠慢が、重大な事故に繋がったと推測できます。

中には、

  • 機械の運転を停止させずに刃部の検査の作業を行わせる等、危険防止措置を講じなかった
  • 爆発が生ずるおそれがある場所において、アーク溶接機を使用した
  • 送電線の下部で高所作業車を使用させるにあたり、感電防止措置を講じていなかった
  • 高さ約16mのダム設備工事点検歩廊上で、囲い等の墜落防止措置を講じることなく労働者に作業を行わせた

など、なぜ危険に応じた対処をしていなかったのか理解に苦しむ事例もあります。
「今まで事故なんて起きていないから」と、惰性で違反行為が繰り返されることで常態化し、危機意識も薄れていたのではないかと思います。

事業者は、労働者への安全衛生教育の実施を義務付けられていますが(労働安全衛生法第59条・第60条)形だけ実施したのでは意味がありません。
誰のために、何のために実施するのか、現場の作業者や監督者だけでなく、事業責任者も安全への当事者意識を高める必要があるでしょう。

労働者死傷病報告に関する違反

事業者の講ずべき措置等に関する違反に次いで、労働安全衛生規則第97条の「労働者死傷病報告」に関する違反が多くなっています。有罪が確定した事案もあります。

(労働者死傷病報告)
第九十七条 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。[後略]

《実際に送検された事案概要の例》

  • 約2か月の休業を要する労働災害について、虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告書を提出した(有罪確定)
  • 4日以上の休業を要する労働災害が発生したのに、遅滞なく、労働者死傷病報告書を提出しなかった(有罪確定)

労災事故が発生した場合、事業主は「労働者死傷病報告」を期限内に必ず行う義務があります。
しかし、受注を確保するために元請けの労災保険を使わないよう労災事故を隠蔽したり、業務中の事故を通勤災害扱いにするなど、「労災かくし」は依然 後を絶ちません。

過去には、元請けの担当者も黙認していたとして、共犯で書類送検されたケースもあります。メリット制の適用を受けている事業場には、還付金の回収を行うなどの措置も取られます。

メリット制とは
労働災害の割合に応じて、労災保険の割合やその額を増減させる仕組み。
事故率が低いほど保険率・保険料が軽減される。

『「労災かくし」は犯罪です。』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/rousai/

まとめ

事業主には、労災事故の防止・補償・報告の義務があります。
たとえ労災事故が発生していなくとも、法違反があれば刑事責任を問われますし、企業への信頼・信用に多大なダメージを与えます。

従業員の心身の健康や生命の安全を確保することは企業の義務であり、従業員の守られるべき当然の権利です。コンプライアンスの観点からも無視できません。

正しい安全衛生管理がなされているか?万が一、労災事故が起きた場合の対応は?
今一度振り返り、対策が不十分だと思われる部分は速やかに改善する必要があるでしょう。

自社の労働環境の実態をきちんと把握し、適切なリスクマネジメントに取り組み、健康的で安全・安心な労働環境を「当たり前」にしたいですね。

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