勤怠管理とは?コンプライアンスの観点から解説
従業員の勤怠状況を正しく管理することは、企業のコンプライアンスを徹底する上で重要なポイントになります。
コンプライアンスは法令遵守と訳されますが、法令や規則を守るだけでなく、社会的な倫理観・道徳観に基づいた良識ある企業活動も含まれています。
勤怠管理は、企業コンプライアンスの広範な概念において、どのような役割を果たすのでしょうか?
目次
勤怠管理とコンプライアンス
勤怠管理は、 法令の遵守 というコンプライアンスの基本を守るためにも重要です。
労働基準法では、法定労働時間や休日、時間外労働の上限、深夜労働や休日労働、有給休暇の取得など、企業が守るべき労働時間の枠が規定されています。
勤怠管理が適切に行われていないと、上限規制を超える時間外労働になっていないか、休日・休暇は適切に取得できているか把握することができず、従業員に 過重な長時間労働をさせるリスク が高まります。
時間外労働や休日出勤による長時間労働は、肉体的・精神的にも疲労を蓄積させ、従業員の脳疾患や心臓疾患の発症リスクを高め、うつ病にかかるなど、
心身の健康状態に悪影響
を与えます。
最悪の場合、過労死や自殺にいたるケースも少なくありません。
勤怠管理で従業員の勤怠状況をきちんと把握し、働きすぎていないか適宜チェックを行い、必要に応じて業務を調整したり産業医の面談を受けさせるなど、 従業員の健康と安全を確保するための適切な措置を取る ことが必要です。
また、労働時間の管理が適切でないと、正しく給与を支払うことができず、賃金の未払いによるトラブルを引き起こす危険もあります。
インターネットやSNSが発達したことにより、企業の不祥事やブラック企業の悪印象はあっという間に拡散されます。
コンプライアンス違反は処罰を受けるだけでなく、企業の
社会的信頼・信用
を失い、結果として利益を損失し倒産にいたる事態にもなります。
適正な勤怠管理は、企業が法令を遵守して健全な労務・経営を行っているという一つの証明 なのです。
勤怠管理と労働基準法
労働時間の適正管理
労働基準法において、 労働時間は1日8時間以内かつ週40時間以内 と定めており( 法定労働時間 )、 休日は週1日以上または4週間で4日以上 を与えるように定めています。
厚生労働省のガイドラインにおいて、企業は「労働時間を適正に把握するなど、労働時間を適切に管理する責務を有している」とされ、 正しい勤怠管理は企業の義務 であると言えます。
タイムカードやICカード、パソコンの使用時間のログといった 客観的な記録をもとに、従業員の勤怠を記録・管理 しなければなりません。
フレックスタイム制では、法定労働時間の総枠は清算期間全体で週平均40時間と決まっています。フレックスタイム制の場合でも、企業は従業員の労働時間を正確に管理する必要があります。
高度プロフェッショナル制度では、労働基準法の労働時間の規定は適用されませんが、制度を運用する上で、対象の従業員に対する健康管理時間の把握や休日の管理が必要とされています。
時間外労働・休日労働
労使で締結した「 時間外・休日労働に関する協定届 」いわゆる 36協定 を所轄の労働基準監督署へ届け出なければ、時間外労働および休日労働をさせることはできません。
時間外労働時間とは、法定労働時間を超えた労働時間のことを指します。
働き方改革により、時間外労働時間の上限が規制され、特別条項付き36協定にも限度時間が定められました。
原則
時間外労働上限:月45時間以内かつ年360時間以内
特別条項付き36協定の場合
- 時間外労働上限:年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計:月100時間未満
- 時間外労働の月45時間超:年6ヶ月まで
- 時間外労働と休日労働の複数月平均:80時間以内
時間外労働時間には、基礎賃金の25%以上を上乗せした割増賃金が支払われますが、
月60時間を超える時間外労働
には、さらに25%を上乗せした
50%以上の割増賃金
の支払いが必要です。
中小企業も2023年4月に義務化
となります。
すべての従業員が上限時間を超過していないかチェックしつつ、適正な割増賃金額を算出しなければなりません。そのためにも、時間外労働と休日労働の時間を正確に把握する必要があります。
有給休暇
2019年4月から、年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対して、企業は 年5日の有給休暇を取得させることが義務化 されました。
雇入れの日から
6か月間の継続勤務と8割以上の出勤
で年次有給休暇が付与され、管理監督者や有期雇用の従業員も例外ではありません。
パートなど所定労働日数が少ない従業員については、所定労働日数に応じた日数が
比例付与
されます。
有給休暇の年5日取得義務は、雇用の正規・非正規を問わず、 年10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての従業員が対象 です。
企業は、年次有給休暇を取得した従業員に対して、賃金の減額や有給取得日を欠勤とするなどの 不利益な取扱いをしてはならず 、原則として従業員が希望する時季(取得日)に有給休暇を取得させなければなりません。また、従業員ごとに 有給休暇管理簿を作成し、5年間保存 する必要があります。
コンプライアンス強化に最適なクラウド勤怠管理システム
勤怠管理は、出勤簿やタイムカードなど様々な方法で行われていますが、近年、正確かつ効率的に労働時間を管理できるツールとして、クラウド勤怠管理システムが注目されています。
手作業の勤怠管理をシステムで自動化すれば、担当者の負担を軽減するだけでなく、コンプライアンスの強化にも効果を発揮するでしょう。
それでは、どのような点がコンプライアンス強化に適しているのか?クラウド勤怠管理システムの特徴を見ていきましょう。
多様な働き方に対応した勤怠管理ができる
クラウド勤怠管理システムは、様々な雇用形態・勤務形態に対応し、企業の 就業規則や36協定に沿った柔軟な勤怠管理 を行えます。
従業員ごとに細かい労働条件を設定できるので、正社員や契約社員、派遣社員、パート・アルバイトなど異なる雇用形態の管理もスムーズです。
また、クラウド勤怠管理システムなら、シフト制、変形労働制、フレックスタイム制などの勤務形態にも対応できます。直行直帰や出張の多い従業員や、テレワーク中の従業員の勤怠管理も簡単になります。
クラウド勤怠管理システムは、インターネットが使える環境であれば時間・場所を問わず利用できるので、働き方改革などでニーズの高まっている 多様な働き方を取り入れることが可能 となります。
リアルタイムな勤怠を確認できる
クラウド勤怠管理システムの打刻データは、すぐにクラウドに保存・共有され、 誰が・何時から何時まで・どれだけ働いたか をリアルタイムに把握できます。
出勤・退勤時刻などの打刻を1分単位で記録します。
管理者は、従業員の勤務状況をいつでも確認でき、労働時間が多くなっている従業員に対してタイムリーに対応できるようになります。
アナログな管理方法では、月末など勤怠の締め日にならないと残業や休日出勤などの実態が把握できず、限度時間を超過していたことが後から判明したりと後手の対応しかできませんでした。
クラウド勤怠管理システムによって、勤怠データがリアルタイムに集計されることで、勤務の実態と打刻データに矛盾はないか、勤務時間は適切か、時間外の労働時間が多くないか、休日出勤は代休などで振り替えられているか、など 法令違反にならないよう適宜チェックすることが可能 になるのです。
時間外労働を正しく管理できる
クラウド勤怠管理システムでは、日々の残業時間や休日出勤がデータとして可視化され、従業員一人一人の 時間外労働・休日労働の状況が一目で把握できる ようになります。
アラート機能 を搭載したシステムでは、法令や36協定で規定された上限時間をアラート通知の条件に設定することで、限度時間を超過する前に注意が促され、 長時間労働の抑制 につながります。
上限に達しそうな従業員を常にリアルタイムで把握できるので、残業時間が特定の人に偏らないよう、必要に応じて業務量を調整したり業務内容を分担するなど、従業員の 負担を軽減する対策を講じることが可能 です。
複雑な有給休暇もスムーズに管理できる
クラウド勤怠管理システムによって、 誰に・いつ・何日の有給休暇が付与され、誰が・いつ・何日の有給休暇を取得したか 、煩雑だった有給休暇管理がスマートになります。
有給休暇は、基準日や付与日数、有給更新日が従業員ごとに異なるのはもちろん、取得時季や取得日数、残日数も従業員によってバラバラです。
クラウド勤怠管理システムでは、基準日・付与日数・更新日を従業員ごとに細かく設定でき、 取得日数や残日数が自動計算 されます。
また、有給休暇管理簿が自動で作成されるシステムもあり、必要に応じてダウンロードや印刷ができるので、有給休暇管理簿の保管義務にもラクに対応できます。
勤怠の申請・承認がシンプルになる
クラウド勤怠管理システムには、オンラインで勤怠の申請・承認ができるサービスもあります。
紙ベースの申請・承認では、不正やミスが発生するリスクがあり、承認までに時間もかかっていました。
残業や有給休暇など勤怠の申請をクラウド上で行えるシステムであれば、ペーパーレス化により
申請・承認のフローが簡潔になり、コストも手間も削減
されます。
事前申請にすることで、残業の理由や有給休暇の取得状況を管理者が前もって把握できるので、適宜ワークシェアリングやスケジュール調整を行うなど、柔軟なマネジメントが可能となります。
まとめ
勤怠管理は法令で定められた企業の義務であり、働き方改革によって労働時間や有給休暇に関する規定が厳格になったことで、企業は客観的でより正確な労働時間管理が求められています。
労働に対する価値観が多様化し、ワークライフバランスへの関心が高まっている現代社会において、企業は多様な働き方を取り入れていかなければ成長は見込めないでしょう。
クラウド勤怠管理システムを活用することで、煩雑だった管理作業は簡略化・自動化され、様々な雇用形態・勤務形態で働く従業員の労働時間をスピーディに管理できるようになります。
適正な勤怠管理を行うことで、企業のコンプライアンスが強化され、企業に対する社会的信頼を向上させることも可能となるのです。