【社労士監修】働き方改革とは?長時間労働是正の観点から詳しく解説

【社労士監修】働き方改革とは?長時間労働是正の観点から詳しく解説

近年、働く人の健康や生きがいが重要視されるようになり、ワーク・ライフ・バランスの向上が叫ばれています。

働き方改革は、そうした社会的動向の中で推し進められている国ぐるみの労働変革です。

そこで本記事では、なぜ今働き方改革が求められているのか、働き方改革とは具体的にどのような取り組みなのか、労働時間の是正にスポットを当てて解説していきます。

働き方改革とは?

働き方改革の背景と目的

働き方改革とは、従来の労働者の働き方もとい企業の雇い方を転換させるための政策です。

我が国では、少子高齢化にともない生産年齢人口(労働に従事できる年齢の人口)が減り続け、いわゆる人手不足倒産が増加し続けるほど、働き手の減少が深刻化しています。

生産年齢人口のうちの労働力人口(就業者と完全失業者の合計)を増やし、労働参加率を向上させることが火急の課題となっています。

しかし、従来の画一的な働き方では、人々の多様化する価値観やライフスタイル・ライフステージに対応できていないのが現状です。

就業を諦めていた女性や高齢者、障害者などの意欲ある人々にもチャンスが与えられるためには、各々の意思・能力・事情に対応できる柔軟な働き方が必要です。

働き方改革は、働く人が主体的に「多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすること」を目的としています。

労働時間と働き方改革

一昔前まで、労働時間の長さで仕事に対する意欲や努力が判断され、残業などで長時間働く従業員の方が優秀であると評価される風潮がありました。

しかし、長時間労働は脳疾患や心臓疾患の発症リスクを高め、重大な健康障害や過労死を引き起こしたり、鬱病などの精神障害から最悪自殺にいたる事例も発生していました。

働き方改革は、健康を害するほど働き過ぎていた労働時間を是正し、従業員のモチベーションを維持・向上させて労働生産性を高め、一人ひとりのワーク・ライフ・バランスの実現を目指しています。

長時間労働是正の取り組み

働き方改革では、労働時間を法的に規制することで、深刻な健康被害を生じかねない長時間労働の抑制と生活時間の充足を図っています。

時間外労働の上限規制

労働基準法の改正により、時間外労働に上限時間が設けられました。

大企業では2019年4月から、中小企業においても2020年4月から適用されています。

本来、労働基準法において、労働時間は1日8時間・週40時間以内(法定労働時間)、休日は週1日以上あるいは4週間で4日以上(法定休日)と定められています。

法定労働時間を超えて時間外労働をさせたり法定休日に労働させる場合、「時間外労働・休日労働に関する協定届」いわゆる36協定届を所轄の労働基準監督署長へ届け出なければなりません。

今回の労働基準法改正により、36協定の時間外労働の限度時間は、「通常予見される範囲内」において、月45時間以内かつ年360時間以内(休日労働は含まない)でなければならず、これを超える協定は、全体として無効とされます。

ただし、「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等」に伴い、臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合に備えて、「特別条項」を定めることができます。
例えば、予算・決算業務や納期のひっ迫、機械のトラブルへの対応などです。

特別条項付き36協定の場合でも、①時間外労働(休日労働を含まない)は年720時間以内、②時間外労働と休日労働の合計は1か月で100時間未満かつ、複数月(2~6か月)平均で80時間以内、③時間外労働(休日労働を含まない)が月45時間を超えることができる(特別条項を適用できる)のは年6ヶ月まで、と上限が設けられ、②に違反した場合には罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が定められました。

原則
時間外労働上限:月45時間以内かつ年360時間以内
特別条項付き36協定の場合
時間外労働上限:年720時間以内
時間外労働と休日労働の合計:月100時間未満
時間外労働の月45時間超:年6ヶ月まで
時間外労働と休日労働の複数月平均:80時間以内

上限規制の例外として、建設事業・自動車運転の業務・医師については、2024年3月31日まで限度時間の適用が猶予されていますが、猶予期間でも限度時間に配慮することが求められています。

【建設事業】
2024年4月1日以降、災害の復旧・復興の事業を除いて上限規制がすべて適用されます。
災害の復旧・復興の事業に関しては、時間外労働と休日労働の合計に関する規制は適用されません。

【自動車運転の業務】
2024年4月1日以降、特別条項付き36協定の時間外労働の年間上限時間が960時間となります。
時間外労働と休日労働の合計に関する規制は適用されず、月45時間超を年6か月までとする規制は適用されません。

【医師】
2024年4月1日以降、時間外労働の限度時間が休日労働を含めて月100時間・年960時間となります。
暫定特例水準に該当する場合は、休日労働を含めて年1860時間以下となります。

時間外労働の割増賃金率

企業は、時間外労働に対して基礎賃金の25%以上を上乗せした割増賃金を支払わなければなりません。
深夜(午後10時から翌日午前5時まで)の労働では25%以上、法定休日に労働させる休日労働の場合は35%以上の割増賃金を支払う必要があります。

時間外労働や休日労働が深夜労働となった場合は、それぞれ重複する割増賃金を支払います。
時間外労働の深夜労働分は合計50%以上、休日労働の深夜労働分は合計60%以上の割増賃金を支払う必要があります。

割増賃金率割増賃金率
時間外労働25%
法定休日労働35%
深夜労働25%
時間外労働+深夜労働25%+25%=50%
休日労働+深夜労働25%+35%=60%

月60時間を超える時間外労働に対しては、50%以上の割増賃金を支払わなければなりません(中小企業は現在努力義務ですが、2023年4月からは、義務となります。)。
ただし、月60時間を超える時間外労働の割増賃金のうち、引上げられた25%分の代わりに有給休暇(代替休暇)を付与することも可能です(後述、代替休暇制度)。

1か月の起算日は、 賃金計算期間の初日・毎月1日・36協定期間の初日などがありますが、起算日から時間外労働の時間数の累計が60時間を超えた時点で、割増賃金率が50%以上になります。
その後の時間外労働が深夜労働になった場合も割増賃金は重複するので、合計75%以上の割増賃金を支払う必要があります。

代替休暇制度
月60時間を超える時間外労働の割増賃金のうち、引上げられた25%分の代わりに有給休暇(代替休暇)を付与することで、割増賃金の支払いを従来の25%に抑えられる制度です。

代替休暇として付与できる時間数の算定方法と単位、付与できる期間、取得日の決定方法、割増賃金の支払日を定めた労使協定を締結することで、代替休暇制度を導入できます。
代替休暇制度を新たに導入する場合、就業規則へ記載して変更を届け出なければなりません。

代替休暇として付与される有給休暇は、年次有給休暇とは別に扱われます。
取得するかどうかは従業員の意思で決定され、取得日も従業員の意向を踏まえる必要があります。

勤務間インターバル

勤務間インターバルとは、終業時刻から翌始業時刻までの間に一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を設ける制度です。

労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の改正で、勤務間インターバルの導入が努力義務として規定されました。
従業員の十分な生活時間や睡眠時間を確保することを目的としています。

ある時刻以降の残業を禁止して次の始業時刻以前の勤務を認めない、あるいは残業で勤務終了時刻がズレ込んだ分翌日の勤務開始時刻を繰り下げる、などの取り入れ方があります。

年次有給休暇の取得率向上のために

働き方改革では、義務化して年次有給休暇の取得率を高めることで、従業員のリフレッシュとモチベーション向上を図っています。

年次有給休暇とは

年次有給休暇とは、使用者から賃金が支払われる休暇日のことで、1年ごとに一定の日数が従業員に与えられます。

雇入れの日から6か月間の継続勤務かつ全労働日の8割以上出勤で、従業員は継続し又は分割した10日間の年次有給休暇を取得できます。
さらに、1年6か月以上継続勤務した従業員に対しては、直近1年間の8割以上出勤で、11日から20日の年次有給休暇を取得できます。

対象の従業員には管理監督者や契約社員などの有期雇用従業員も含まれます。

勤続期間付与日数
6ヶ月10日
1年6ヶ月11日
2年6ヶ月12日
3年6ヶ月14日
4年6ヶ月16日
5年6ヶ月18日
6年6ヶ月20日

年次有給休暇の請求権の時効は2年であり、前年度に取得されなかった年次有給休暇は翌年度に与える必要があります。
付与から2年以上経過した有給休暇は消滅してしまいます。

使用者は、年次有給休暇を取得した従業員に対して、賃金の減額その他不利益な取扱い(年次有給休暇を取得した日を欠勤や欠勤に準じて取扱うなど)をしてはなりません。

また、年次有給休暇は従業員が請求する時季に与えなければなりません。
年次有給休暇をいつ取得するか、その時季を指定できる時季指定権は従業員が有する権利なので、使用者は従業員が指定した時季に有給休暇を取得させるのが基本です。

ただし、同一期間に多数の従業員の休暇希望が集中し、全員に希望通りの休暇を付与することが困難なケースなど、従業員からの請求時季に年次有給休暇を取得させると事業の正常な運営を妨げる場合に、使用者が他の時季に変更できる時季変更権を認められています。

比例付与

パートタイム従業員などの所定労働日数が少ない従業員については、年次有給休暇の日数は所定労働日数に応じて比例付与されます。

比例付与の対象となるのは、所定労働時間が週30時間未満かつ週所定労働日数が4日以下または年間の所定労働日数が216日以下の従業員です。

週所定
労働日数
年所定
労働日数
勤続年数
6ヶ月1年
6ヶ月
2年
6ヶ月
3年
6ヶ月
4年
6ヶ月
5年
6ヶ月
6年
6ヶ月
4日169日
~216日
7日8日9日10日12日13日15日
3日121日
~168日
5日6日6日8日9日10日11日
2日73日
~120日
3日4日4日5日6日6日7日
1日48日
~72日
1日2日2日2日3日3日3日

年5日の有給休暇取得を義務化

2019年4月から、年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対して、企業は年5日の有給休暇を取得させることが義務化されました。

正規・非正規を問わず、年10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての従業員が対象です。
年次有給休暇の基準日から1年以内に、取得時季を指定して5日の有給休暇を取得させる必要があります。

法定の基準日より前倒しで年次有給休暇を付与した場合、付与日数の合計が10日に達した日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させなければなりません。
合計付与日数が10日に達する以前に従業員が主体的に請求・取得していた有給休暇に付いては、その取得した日数分を取得義務日数から控除します。

年次有給休暇管理簿

使用者は、従業員ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、5年間(当分の間3年間)保存することが義務付けられました。
※注記:5年間(当分の間3年間)と改正されたのは令和2年4月から

年5日の取得義務を満たしているか、有給休暇の取得状況を正確に把握することが目的です。

年次有給休暇管理簿では、有給休暇の取得権が発生した基準日、有給休暇を取得した日付である時季、取得した有給休暇の日数などを従業員ごとに管理します。

該当する年休を与えた期間中(基準日から1年間)と満了後の合わせて5年間(当分の間3年間)保存しなければなりません。

従業員名簿または賃金台帳とあわせて調製でき、必要なときにいつでも印刷できるならシステム上での管理も可能です。

多様で柔軟な働き方の推進

働き方改革では、多様で柔軟な働き方の選択肢を増やすことで、従業員の働きやすさや働きがいを充足させ、ワーク・ライフ・バランスの向上を図っています。

フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、従業員が日々の始業・終業時刻などの労働時間を自身で決め、自律的に就業する制度です。
働き方改革にともなう法改正によって清算期間が延長され、より柔軟な働き方ができるようになりました。

清算期間とは、フレックスタイム制において従業員が労働時間の調整を行う期間のことです。
従来は清算期間の上限が1か月でしたが、労働基準法の改正で上限が3か月に延長されました。
労使協定に明記すれば、同じ事業所内でも対象者や部署ごとに異なる清算期間を規定できます。

フレックスタイム制における時間外労働は、清算期間内での総労働時間のうち法定労働時間の総枠(=清算期間全体で週平均40時間)を超えた時間が対象となります。
清算期間が1か月を超える場合、1か月ごとの労働時間が週平均50時間を超えた場合も時間外労働として扱われるため注意が必要です。

年次有給休暇を取得した場合、労使協定で定めた「標準となる1日の労働時間」の時間数を労働したものとして取り扱うので、 実労働時間に「年次有給休暇を取得した日数 × 標準となる1日の労働時間」を加えて計算します。

フレックスタイム制を導入する場合でも、時間外労働には法令で定められた割増賃金が適用され、年次有給休暇も適切に取得させなければなりません。

高度プロフェッショナル制度

高度プロフェッショナル制度とは、特定の高度専門業務において労働時間ではなく成果物で評価する労働制度です。
年収1075万円以上の、金融商品開発業務・研究開発業務などに従事する労働者が対象となります。

高度プロフェッショナル制度では、始業・終業時刻などの働く時間を従業員自身が決定し調整するため、自律的で柔軟な働き方が可能です。

労働基準法における労働時間、休憩、休日、深夜の割増賃金に関する規定が適用されず、時間外・休日労働が存在しなくなるため、残業代などの時間外手当もなくなります。

そこで企業は、長時間労働の抑制や従業員に対する安全配慮のため、健康管理時間の把握や休日(年間104日以上かつ4週4日以上)の確保、選択的措置、健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置などを実施しなければなりません。

健康管理時間とは、対象従業員が会社内にいた時間と社外で労働した時間の合計時間で、原則として休憩時間も含まれます。
健康管理時間は客観的な方法で記録し把握する必要があります。

選択的措置は、以下4つの中から企業が選択して実施します。

  • 11時間以上の勤務間インターバルの確保と深夜業の回数制限(1ヶ月に4回以内)
  • 健康管理時間の上限措置(1ヶ月100時間以内または3ヶ月240時間以内)
  • 1年に1回以上の連続2週間の休日付与(年次有給休暇は除く)
  • 臨時の健康診断

健康管理時間の把握・休日の確保・選択的措置を実施していない場合、高度プロフェッショナル制度が適用されなくなるので注意が必要です。
制度が無効となると、対象従業員は一般の従業員として労働時間の規制を受けるため、長時間労働をしていた場合、上限規制を超えていれば労働基準法違反となります。

また、高度プロフェッショナル制度でも有給休暇の規定は変わらず適用されるので、一般の従業員と同様に年次有給休暇も取得できます。

多様な正社員制度

多様な正社員制度とは、いわゆる正社員(従来の正社員)と比べ、配置転換や転勤、仕事内容や勤務時間などの範囲が限定されている正社員をいいます。

無期労働契約を締結しており、時間当たりの基本給及や賞与・退職金の算定方法などが同種の正社員と同等に扱われ、社会保険も適用されます。

多様な正社員制度により、育児・介護と仕事を両立したい従業員、定年後も働き続けたい高齢者、心身の健康不全による休職から職場復帰を目指す休職者など、働ける時間に制約のある人々も就業しやすくなります。

テレワーク

テレワークとは、時間や場所に囚われない柔軟な働き方のことです。

自宅での在宅勤務や外勤でのモバイルワーク、コワーキングスペースなどの施設を利用したサテライトオフィス勤務の形態があります。

諸事情で勤務可能な時間帯に制限がある人や障害などにより通勤が困難な人にとって、決まった時間にオフィスへ出社して決まった時間まで仕事をする従来の働き方では就業が難しく、就労を諦めたりやむを得ず離職するなど、働く意思があっても働けない状況でした。

テレワークを導入することで、勤務する時間や場所を従業員が主体的に選択できるようになり、時間や場所の制約がある人材への門戸を開くことが可能となります。

まとめ

働き方改革によって、労働時間が短縮され雇用形態・勤務形態の選択肢が増え、多様なライフステージに適応した働き方を従業員自身が選択できるようになります。

従業員個人のワーク・ライフ・バランスを実現することで、企業は労働力を確保し、企業全体の生産性を向上させられます。

働き方改革で従業員それぞれが多様な働き方を選べるようになるということは、それだけ多くの働き方に応じた労働時間の管理が企業に求められます。

従業員の働き方に柔軟に対応した正確な勤怠管理を行うことが、これからますます重要になるでしょう。

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監修
社会保険労務士・行政書士 たけはら事務所竹原 誠
執筆
株式会社ITZ築田 弥雪
2019年株式会社ITZ入社。2020年5月よりかえる勤怠Tipsに記事を執筆。
趣味は古本の積読。
勤怠管理を中心に、人事・労務に役立つ情報を発信できるよう勉強しています。
本文の内容は執筆時点のものです。その後の法改正などは反映しておりません。
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