勤怠管理はなぜ必要?コンプライアンスの観点から解説

勤怠管理はなぜ必要?コンプライアンスの観点から解説

従業員の勤怠状況を正しく管理することは、企業のコンプライアンスを徹底する上で重要なポイントになります。

コンプライアンスは法令遵守と訳されますが、法令や規則を守るだけでなく、社会的な倫理観・道徳観に基づいた良識ある企業活動も含まれています。

勤怠管理は、企業コンプライアンスの広範な概念において、どのような役割を果たすのでしょうか?

そもそも勤怠管理とは?

勤怠管理とは何か

勤怠管理とは、企業が従業員の「勤怠」の状態を管理することです。

勤怠とは、仕事に励むことと怠けることを意味し、出勤と欠勤、つまり勤務日数や労働時間などを指します。

企業は従業員に対して、就業の開始時刻と終了時刻、休憩、遅刻・早退、時間外労働などの時間管理や勤務日数、有給休暇の取得などといった日々の勤怠を正確に把握し、法令や会社の就業規則に則った労働であるか適切に管理することが求められています。

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の中でも、「使用者は労働時間を適正に把握するなど、労働時間を適切に管理する責務を有している」とされ、勤怠管理は使用者である企業の義務となっています。

勤怠管理の対象

勤怠管理は、労働基準法の労働時間に関する規定が適用される全ての事業所において、管理監督者も含めた全ての従業員が対象となります。

労働時間の規定が適用されない高度プロフェッショナル制度の適用者でも、安全と健康確保のため、過重な長時間労働になっていないか、休日は適切に取得できているかを把握しなければなりません。

企業規模の大小を問わず、一人でも従業員を雇うほぼ全ての企業が、所属する全従業員に対して勤怠の時間管理をする必要があるのです。

管理する項目

労働日数・欠勤日数・休日
従業員が1ヶ月のうち何日働いて何日休んだのか、月単位での勤務状況を管理します。
賃金支払いの対象となる労働日数、控除の対象となる欠勤日数、もともと賃金の発生しない所定休日や出勤と休日の予定を入れ替えた振替休日などを記録します。

出勤時刻・退勤時刻・休憩時間・実労働時間
何時から何時まで働いてどれくらい休憩を取ったのか、労働日ごとの労働時間を管理します。
出勤時刻から退勤時刻までの勤務時間と休憩時間から実労働時間を記録することで、適正な給与計算の算出が可能となります。

時間外労働時間・深夜労働時間・休日労働時間
法定労働時間の超過時間、深夜帯での就業時間、法定休日の労働といった割増賃金の対象時間を管理します。
時間外労働や深夜業、休日出勤の労働時間には、それぞれ異なる割増率であるため、これらの時間を正確に把握する必要があります。

有給休暇
適切に有給休暇を取得できているか、有給付与日から1年ごとの有給休暇の取得状況を管理します。
働き方改革により、年10日以上の有給休暇を付与される従業員に年5日の有給休暇を取得させるとともに、有給休暇管理簿の保存も義務付けられています。

勤怠管理はなぜ必要なのか

適正な給与の支払い

従業員の給与は、労働時間をもとに計算され支払われています。
従業員が働いた時間を把握できなければ、正しく給与を支払うことはできません。

労働時間の管理が不十分で残業など時間外労働の時間を正確に把握できなければ、残業代など割増賃金の手当を正しく計算できず、保険料や税金の計算にも影響が出てしまいます。

給与計算のミスは従業員のモチベーションを下げるだけでなく、賃金の未払いによるトラブルを引き起こす危険もあります。

労働基準監督署から調査が入って是正勧告や指導を受けたり、裁判で高額の支払い命令が下される可能性も大いにあります。
適切な勤怠管理がされていないと、正しい給与支払いを証明することができません。

適正な賃金算定のため、出勤時刻・退勤時刻はもちろん時間外労働についても、従業員の労働時間は1分単位の正確さで管理することが求められます。

安全配慮義務

労働契約法において、企業は安全配慮義務を負うものとされています。
従業員が心身の健康も含めて、生命・身体などの安全を確保して働くために、企業側で必要な措置を取ることが求められます。

勤怠管理が適切に行われていないと、残業や休日労働が特定の従業員に偏っていることや時間外労働の限度時間を超えていることに気付かず、過重な長時間労働をさせる可能性が高まります。

時間外労働や休日出勤による長時間労働は、肉体的・精神的にも疲労を蓄積させ、従業員の脳疾患や心臓疾患の発症リスクを高め、うつ病にかかるなど、心身の健康状態に悪影響を与えます。
最悪の場合、過労死や自殺にいたるケースも少なくありません。

会社に過失がある場合、被害者遺族に対する賠償責任を問われます。
その賠償請求の金額は、生きていれば得られたと想定される逸失利益なども合わせられ、高額な賠償金額になることも珍しくありません。

勤怠管理によって従業員の労働時間や勤務日数を把握し、働きすぎの従業員がいないか、適宜確認することが大切です。

必要に応じて業務内容や業務量を調整したり産業医の面談を受けさせるなど、従業員の健康と安全を確保するための適切な措置を取ることが必要です。

コンプライアンス

労働基準法では法定労働時間や休日、時間外労働の上限、深夜労働や休日労働、有給休暇の取得など、企業が守るべき労働時間の枠が規定されています。

違反すれば、労働基準監督署から是正勧告や指導を受け、場合によっては違反企業として社名が公表されたり罰則を科されることになります。

厚生労働省のガイドラインでも従業員の労働時間管理は企業の義務とされており、勤怠管理は法令の遵守というコンプライアンスの基本を守るためにも重要です。

勤怠管理が行われていないと、上限規制を超える時間外労働になっていないか、休日・休暇は適切に取得できているか、勤務の予定と実績に乖離がないか、諸々の勤怠の実態が法令に違反していないかどうかを確認できません。
適切な勤怠管理が行われないままでは、いずれ給与の未払いやうつ病、過労死などの問題を引き起こします。

インターネットやSNSが発達したことにより、企業の不祥事やブラック企業の悪印象はあっという間に拡散されます。
コンプライアンス違反は処罰を受けるだけでなく、企業の社会的信頼・信用を失い、結果として利益を損失し倒産にいたる事態にもなります。

勤怠管理で正しく労働時間を把握することは、企業が法令を遵守して健全な労務・経営を行っているという一つの証明です。

適正な勤怠管理によって、働き方改革やワークライフバランスの実現といった社会の新しい要求にも適応できるようになります。

勤怠管理と労働基準法

労働時間の適正管理

労働時間は、労働基準法において1日8時間以内かつ週40時間以内が法定労働時間として定められています。 また、週1日以上あるいは4週間で4日以上の休日が必要です。

厚生労働省のガイドラインにおいて、企業は「労働時間を適正に把握する責務がある」とされ、従業員の労働日ごとの出勤時刻・退勤時刻を確認して正確に記録することを求められています。

管理者による現認、あるいはタイムカードやICカード、パソコンの使用時間のログなど客観的な記録を基本情報として、従業員の勤怠を記録・管理する必要があります。

また、企業は賃金台帳の適正な調製のために、従業員ごとの労働日数・労働時間数・休日労働時間数・時間外労働時間数・深夜労働時間数を正しく記帳しなければなりません。

フレックスタイム制の法定労働時間の総枠は清算期間全体で週平均40時間と決まっており、フレックスタイム制においても企業は従業員の労働時間を正確に管理する必要があります。

高度プロフェッショナル制度では、労働基準法の労働時間の規定は適用されませんが、制度の運用において、対象の従業員に対する健康管理時間の把握や休日の管理が必要です。

時間外労働・休日労働

労使で締結した「時間外・休日労働に関する協定届」いわゆる36協定を所轄の労働基準監督署へ届け出なければ、時間外労働および休日労働をさせることはできません。

時間外労働時間とは、前述の法定労働時間を超えた労働時間のことで、働き方改革により、時間外労働時間の上限が規制され、特別条項付き36協定にも限度時間が定められました。

原則
月45時間以内かつ年360時間以内
特別条項付き36協定の場合
時間外労働:年720時間以内
時間外労働 + 休日労働の合計:月100時間未満
時間外労働の月45時間超:年6ヶ月
時間外労働 + 休日労働の複数月平均:80時間以内

また、時間外労働時間には、基礎賃金の25%以上を上乗せした割増賃金が支払われますが、月60時間を超える時間外労働には、さらに25%を上乗せした50%以上の割増賃金の支払いが必要です。
中小企業に対する猶予の条項が削除され、2023年4月には全ての企業が対象となります。

全従業員が規定の限度時間を超過していないかチェックし、適正な割増賃金額を算出するためにも、時間外労働と休日労働の時間を正確に把握しなければなりません。

有給休暇

2019年4月から、年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対して、企業は年5日の有給休暇を取得させることが義務化されました。

年次有給休暇とは、企業から賃金が支払われる休暇日のことで、1年ごとに一定の日数が従業員に与えられます。

雇入れの日から6か月間継続して勤務し、かつ全労働日の8割以上を出勤していれば、従業員は年次有給休暇を取得できます。

有給休暇付与の対象となる従業員は、管理監督者や有期雇用従業員も含まれ、原則として10日の年次有給休暇が付与されます。
パートタイム従業員などの所定労働日数が少ない従業員の有給休暇については、所定労働日数に応じて比例付与されます。

企業は、年次有給休暇を取得した従業員に対して、賃金の減額や年次有給休暇の取得日を欠勤として取扱うなどの不利益な取扱いをしてはならず、原則として従業員が希望する時季(取得日)に有給休暇を取得させなければなりません。

有給休暇の年5日取得義務は、雇用の正規・非正規を問わず、年10日以上の年次有給休暇が付与される全ての従業員が対象です。
年次有給休暇の基準日から1年以内に、従業員の希望をもとに取得時季を指定し、5日の有給休暇を取得させる必要があります。

企業は、全ての従業員が適切に有給休暇を取得できているか把握するだけでなく、従業員ごとに有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。

勤怠管理の方法

勤怠管理は、主に以下に挙げる4つの方法で行われています。

  • 手書きの出勤簿
  • エクセル
  • タイムカード
  • 勤怠管理システム

手書きの出勤簿
手書きの出勤簿による管理では、出勤・退勤時刻、残業時間、休憩時間、遅刻、早退、休暇の取得など、全ての勤怠情報を1枚の用紙にまとめて記録します。
勤怠記録は従業員の自己申告なので、記載の労働時間の真偽を企業側で確認して判断することは難しく、虚偽の申告による労働時間の水増しや過少申告によるサービス残業が横行するリスクがあります

エクセル
エクセルによる管理では、計算式を設定したセルに従業員が勤怠を入力することで自動的に労働時間を計算し、給与の計算式も組み込むことで勤怠記録から給与計算までの作業時間を短縮できます。
デメリットとしては、計算式に間違いがあると集計や給与計算もそのまま誤ったものになり、残業代など賃金の未払いが発生してしまうリスクがあります。

タイムカード
タイムカードによる管理では、タイムレコーダーに専用のタイムカードを差し込むシンプルな操作で勤怠を記録し、従業員ごとに1ヶ月分の打刻情報を1枚のカードで管理します。
デメリットは、打刻ミスなどの確認やタイムカードの回収・集計に手間がかかり、人件費の増加や人的ミスが生じる点です。また、タイムレコーダーは事業所に設置しての利用に限られるため、直行直帰・出張・テレワークなどの社外勤務での打刻ができません。

勤怠管理システム
勤怠管理システムによる管理では、専用の打刻機あるいはWebブラウザで打刻を記録し、システム上で勤怠情報がリアルタイムに集計されます。
業務内容の簡略化や作業時間の短縮により、バックオフィスの人員削減が可能となります。
デメリットは金銭的コストがかかる点ですが、クラウド型であればサーバーなどの環境を自社で構築する必要がないため、導入・運用の費用を安く抑えて金銭的コストのデメリットを解決します。

近年人気のあるクラウド型の勤怠管理システムは、低い導入コストと簡易な操作性、機能の利便性、システムの柔軟性などのメリットがあるとともに、企業のコンプライアンス強化に適した特徴を持っています。

クラウド勤怠管理システムでコンプライアンス強化

多様な働き方に対応

クラウド勤怠管理システムは、様々な雇用形態・勤務体系に対応し、企業の就業規則や36協定に沿った設定をすることで、柔軟で緻密な勤怠管理が可能となります。

従業員ごとに細かい労働条件を設定できるので、正社員や契約社員、派遣社員、パート・アルバイトなど異なる雇用形態の管理もスムーズです。

また、クラウド勤怠管理システムなら、外回りの従業員が社外でモバイル端末から打刻したり、管理者が社外のパソコンから管理画面で勤怠データを確認・修正することも可能です。
直行直帰や出張の多い従業員の勤怠打刻や、在宅勤務などテレワークの勤怠管理が従来より簡単になります。

多岐にわたる就業形態についても柔軟に管理できるので、シフト制、変形労働制だけでなく、フレックスタイム制や裁量労働制などの制度にも対応できます。

クラウド勤怠管理システムは、インターネットが使える環境であれば時間・場所を問わず利用できるので、働き方改革などでニーズの高まっている多様な働き方を取り入れることが可能となります。

リアルタイム集計・管理

クラウド勤怠管理システムの打刻データは、即刻クラウド上に保存・共有され、「誰が・何時から何時まで・どれだけ働いたか」をリアルタイムに把握できます。

出勤・退勤時刻などの打刻を1分単位で記録し、従業員の勤務状況を管理者はいつでも必要な時に確認でき、労働時間が多くなっている従業員に対してタイムリーに対応できるようになります。

アナログな管理方法では、月末など勤怠の締め日にならないと残業や休日出勤などの実態が把握できず、限度時間を超過していたことが後から判明したりと後手の対応しかできませんでした。

リアルタイムに勤怠データが集計されることで、勤務実態と打刻情報に矛盾はないか、勤務時間は適切か、時間外の労働時間が多くないか、休日出勤は代休などで振り替えられているか、など法令違反にならないよう適宜チェックすることが可能です。

時間外労働の管理

クラウド勤怠管理システムでは、日々の残業時間や休日出勤がデータとして可視化され、従業員一人一人の時間外労働・休日労働の状況が一目で把握できるようになります。

アラート機能を搭載したシステムでは、法令や36協定で規定された上限時間をアラート通知の条件に設定することで、限度時間を超過する前に注意が促され、長時間労働の抑制に繋がります。

上限に達しそうな従業員を常にリアルタイムで把握できることで、残業時間が特定の人に偏らないよう、必要に応じて業務量を調整したり業務内容を分担するなど、従業員の負担を軽減する対策を講じることができます。

有給休暇管理

クラウド勤怠管理システムによって、誰に・いつ・何日の有給休暇が付与され、誰が・いつ・何日の有給休暇を取得したか、煩雑だった有給休暇管理がスマートになります。

有給休暇は、従業員ごとに付与される基準日や付与日数、有給更新日が異なり、取得時季や取得日数、残日数も従業員によってバラバラです。

クラウド勤怠管理システムでは、基準日・付与日数・更新日を従業員ごとに細かく設定することができ、取得日数や残日数が自動計算され、時間有給の管理もスムーズです。

また、有給休暇管理簿が自動で作成されるシステムもあり、必要に応じてダウンロードや印刷ができるので、有給休暇管理簿の保管義務にも対応できます。

オンライン申請・承認

クラウド勤怠管理システムには、オンラインで勤怠の申請・承認ができるサービスもあります。

紙ベースの申請・承認では、不正やミスが発生してしまうリスクがあり、承認までに時間がかかっていました。

残業や有給休暇など勤怠の申請をクラウド上で行えるシステムであれば、ペーパーレス化により申請・承認のフローが簡潔になり、コストも手間も削減されます。

事前申請にすることで、残業の理由や有給休暇の取得状況を管理者が前もって把握できるので、適宜ワークシェアリングやスケジュール調整を行うなど、柔軟なマネジメントが可能となります。

まとめ

勤怠管理は法令で定められた企業の義務であり、働き方改革によって労働時間や有給休暇に関する規定が厳格になったことで、企業には客観的かつより正確な労働時間管理が求められています。

労働に対する価値観が多様化し、ワークライフバランスへの関心が高まっている現代社会において、企業は多様な働き方を取り入れていかなければ成長は見込めないでしょう。

クラウド勤怠管理システムを活用することで、煩雑だった管理作業は簡略化・自動化され、様々な雇用形態・勤務体系で働く従業員一人一人の労働時間管理が迅速かつ精密に行えます。

適正な勤怠管理を行うことで、企業のコンプライアンス強化が促進され、企業に対する社会的信頼を向上させることができるのです。

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