転勤と出向は何が違うの?
ある程度の規模があり、複数の拠点を持っている企業であれば従業員の異動はつきものです。
異動の中でも勤務地の変更を伴うものには、転勤と出向の2種類があります。
この2つにはどのような違いがあるのか、勤怠関連についてはどういった処理をしていけばいいのか、また辞令を受けた場合に社員が採るべき対応などについて見て行きましょう。
転勤と出向の違いとは?
転勤とは、自社または関連のある会社の別の勤務地へ異動する事を言います。
この定義から言うと出向も転勤の一部に入るのですが、出向は、現在勤めている会社とは別の企業の部署への異動を指します。
どちらも人事異動の一種ですが、出向の場合には他社の部署へ配属されるため、指揮命令も出向先の系統に従うことになります。
勤怠関連で見ると、転勤の場合にはこれまで通り自社の勤務規程によりますが、出向の場合には出向先の勤務規程に従うことになります。
ところが、給与はこれまで通り自社から支払われますので、勤務時間や残業手当などの各種調整が必要になってきます。
転勤 | 出向 | |
---|---|---|
異動先 | 自社 | 他社 |
服務規定 | 自社 | 他社 |
給与 | 自社 | 自社 |
出向前にこの辺りを労使双方で周知して了解しておかないと、何かとトラブルの原因となりますので事前に確認を徹底しておきたいところです。
転勤や出向を断ることはできる?
転勤や出向を打診された場合、従業員は断ることができるのか、という問題があります。
勤務地が変われば当然ながらこれまでの居住地からは引越しをしなければいけませんし、家庭の事情で動けないという人もいることでしょう。
しかしながら、転勤も出向も人事異動の一環ですので、よほどの事情がない限りは発令を断ることは出来ないと考えられます。
法的にも会社側の人事権が認められる例がほとんどであり、あくまで話し合いで調整する他に従業員側ができることはありません。
単身赴任で受けられる手当は?
転勤や出向が決まり、家庭の事情で家族を連れて行けないという場合、単身赴任を選択するのが一般的です。
ひとつの家族で生活場所が分かれると経済的な負担もそれだけ大きくなりますので、会社側もそれなりの配慮をする必要があります。
単身赴任手当を設けている会社もみられます。
単身赴任手当は、家計を一にする家族を任地に連れて行けず、居住地が分かれてしまう場合に支払われる手当ですが、会社によっては家族を帯同できない理由に制限があるケースもあるので、事前に確認をしておかなければいけません。
単身赴任を選択するかどうかは基本的には従業員の家庭の事情ですので、会社へは申請をしないと手当が付かない場合も多いという点も気を付けておきたいところです。
また、単身赴任になると家賃の負担も増加するので、住宅手当を増額して対応する会社もあります。
持ち家なのか賃貸なのか、従業員それぞれで家庭事情が異なるため、状況によって支給額を分けている場合が多いです。
その他にも、数か月に一回の割合で家族に会えるようにと帰宅手当を支給する例もあります。
こうした諸手当は、単身赴任をする従業員の経済的な負担をできるだけ軽くするようにとの配慮から行われますが、一方で、手当は給与所得でもあるため、所得税や健康保険の負担額も増加する点を忘れてはいけません。
海外転勤に必要な準備や税金は?
通常の転勤でも一仕事ですが、赴任先が海外ともなると必要になる準備は更に増してしまいます。
まず、それぞれの国の風土によって複数のワクチンを接種して行かなければ危険な場合があります。
次に制度的な面では、就労ビザの取得が必要になりますので、在日大使館へ申請の手続きをしなければいけません。
住居の手配なども国内とは違って下見に行くなどという事は困難なため、基本的には会社に手配してもらうか、当初はホテル暮らしをして早急に現地で決める、という手段を取る場合が多いようです。
税金に関しては、海外に居住して働く場合、給与を日本の会社から得ていても現地の所得税などを徴収されるようになります。
逆に、1年以上海外に赴任する場合には、日本の所得税はかからなくなります。
海外転勤で一番心配なのは病気やケガをした際の対応ですが、これは会社が加入している健康保険がそのまま使えるので、国内にいた時のまま保険料を払います。
ただし、海外の医療機関は日本の健康保険との繋がりはないので、医療費の全額をいったん自己負担した後に、会社が所属する健康保険組合あてに請求するという手続きが必要になります。
まとめ
転勤や出向は従業員にとっても大きな転機となりますが、会社にとっても手続きの多いイベントになります。
特に給与に直接関わる勤怠関連の手続きは間違いなく行い、新しい任地でも安心して仕事に集中してもらえるようにしなくてはいけません。