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給与明細の読み方5 残業代について

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給与明細の読み方5 残業代について

給与明細をもらった際、支給額ばかりに目がいって社会保険の項目は目もくれないという人はいるのではないでしょうか。

給与には、時間外手当(いわゆる残業代)や技術職の人につく特殊勤務手当などもあります。
しかし、これらをどのようにして見れば良いか分からない人も少なくありません。

法定内残業と法定外残業

残業には、法定内残業と法定外残業の2種類のタイプがあります。

就職や転職をする際、労働条件を示した書面が渡されることになっています。
そこには、休日や賃金などの記載に加えて、所定労働時間(=1日に働かなくてはならない労働時間として会社が定めた時間)も載っており、これは勤務先によって異なります。

この所定労働時間は、労働基準法において1週間で40時間以内かつ1日8時間以内と決められています。
この法で定められた時間におさまる労働時間であれば法定内、これを超えると法定外となります。

たとえば、1日の所定労働時間が7時間の会社で2時間の残業をした場合、法定内残業が1時間、法定外残業が1時間となります。
法定外1時間については、法律で定められた割増率の金額を通常の賃金に上乗せして支給することになっています。残る法定内1時間については、必ずしも割増賃金を支払う必要はなく、会社の規定に委ねられています。

割増賃金のルールとは?

割増賃金は、法定外時間外労働、法定休日労働、深夜労働に適用されます。

適用される労働時間 割増賃金率
法定外時間外労働 25% *
法定休日労働 35%
深夜労働 25%
法定外時間外労働+深夜労働 25%+25%=50%
休日労働+深夜労働 25%+35%=60%

* 月60時間を超える時間外労働に対しては、50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
(中小企業は2023年4月から)

ただし、月60時間を超える時間外労働の割増賃金のうち、引上げられた25%分の代わりに有給休暇(代替休暇)を付与することも可能です。

1か月の起算日から時間外労働の累計時間数が60時間を超えた時点で、割増賃金率が50%以上になります。
その後の時間外労働が深夜労働になった場合も割増賃金は重複するので、合計75%以上の割増賃金を支払う必要があります。

ブラックと称される企業の典型例として挙げられるサービス残業は、どれだけ残業をしても残業代が支払われないというものですが、これはれっきとした違法行為です。

みなし残業は何時間でも残業代は発生しない?

みなし残業とは、あらかじめ一定時間残業をしたとみなし、給与の中に一定時間分の残業代を含ませておく制度です。

実際のところ、各社員がどれだけの時間労働したか把握することは難しく、事前にこれだけ労働するだろうと「みなし」て通常の賃金にある程度上乗せして支給しているのです。
実際の労働時間がみなした時間より少なくても、規定の残業代をそのまま受け取れるというメリットがあります。

では逆に、実際の労働時間がみなした時間より多くなってしまった場合は、規定分の残業代しか受け取れないのでしょうか?

答えは「否」です。
みなし残業を適用している場合でも、決して割増賃金を支払う義務がなくなるわけではありません。
みなした時間より実際の労働時間が長くなった場合には、超過した分の残業代を別に支払う必要があります。

給与明細を見て、実際の残業時間や支給されている残業代がおかしいと感じたら、会社の給与担当や上司に確認を取る方が良いでしょう。

まとめ

以上のように、給与明細には見るべき箇所がいくつもあります。
それを正しく理解していないと、本来受け取るべき賃金を受け取れないまま働き続けることにもなりかねません。

そのため、給与に関する制度をしっかりと確認し、疑問に思うことはきちんと問い合わせることが大切です。