ビルメンテナンス業の余分な人件費の発生を抑えるには?勤怠管理のデジタル化を阻む「2つの壁」の攻略法
ビルメンテナンス業は、売上に対する人件費の割合が高く、企業の成長戦略の面からも人件費の高騰は看過できない問題です。
とはいえ、不当な人件費の削減はコンプライアンス的にも大問題ですから、適切な賃金の支払いは欠かせません。どの企業でも、勤怠管理には力を入れていることでしょう。
しかし、第三者の目が届かない一人現場の多いビルメンテナンス業において、その勤怠管理はどこまで正確でしょうか。
余分な人件費が発生している可能性はありませんか?
そこで、ビルメンテナンス業における勤怠管理の課題と解決策について考えていきます。
目次
ビルメンテナンス業の現状
データで見るビルメンテナンス業
全国ビルメンテナンス協会より、『ビルメンテナンス情報年鑑2023』が公開されています。
ビルメンテナンス業務を取り扱う協会員を対象に行われた「第53回実態調査」(2022年9~10月実施)の結果を見ることができます。
この調査結果によると、ビルメンテナンス業務の成長率は、2021年度調査時と比べると上昇はしているものの、コロナ禍前の水準には届いていません。
次いで、売上高見通しを見てみると、前年度から「横ばい」とする回答が40.3%と最多です。
全体の見通しとしてはさ、昨年度を下回ると回答した企業が減少しており、回復傾向にあると言えます。しかし、月商規模1,000万円未満の企業では「前年度を大きく下回る」の回答が増加しており、依然厳しい状況であることが伺えます。
対して、業界の平均賃金について見てみると、月給制の常勤従業員と時給制のパートタイマーともに、増加傾向にあることがわかります。
以上のことから、ビルメンテナンス業の現状として、売上はあまり伸びていないのに賃金は上がり続けているという問題に直面していることがわかります。
人件費の増加は利益率の減少につながり、経営に多大なダメージを与えてしまいます。
売上を劇的に増やすことが難しい以上、人件費をなんとか抑えたいですよね。
そこで考えたいのは、今の人件費にムダは発生していないか?ということです。
余分な人件費発生のリスク
ビルメンテナンス業では、従業員が一人きりで働く現場も多く、従業員の良心に頼らざるを得ない場面が多々あります。
- 申告上は出勤となっているが、実は現場に行っていなかったのではないか?
- 遅刻・早退が管理者の知らない間に発生しているのではないか?
- 決められた予定の順番で、きちんと時間通りに現場を回れているのか?
など、状況を直接見ることができない一人現場への不安は尽きません。
勤務する現場も事業所ごとに多数あるため、一人現場の実態が把握しきれず、勤怠が曖昧になりがちです。
手書きの出勤簿を利用した勤怠管理では、不正が起こりやすいという問題もあります。
代理打刻などのなりすまし、遅刻・早退のごまかし、欠勤を出勤と偽るなどの虚偽申告が発生しても、第三者の目が届かない一人現場では見抜きにくいためです。
さらには、給与計算期間における担当者の残業が慢性的になる点も、余分な人件費が発生する要因となります。
月末には、膨大な量の出勤簿・タイムカードを各地から回収。
記入漏れなどのミスがないか1枚1枚チェックし、必要なら従業員へ電話確認。
エクセルへ手入力して集計計算。残業や有給休暇、交通費なども併せて計算。
多重チェックを経てようやく給与計算に・・・
という一連の流れを短期間のうちにミスなく行わなければならず、その負担は計り知れません。
- 《余分な人件費発生のリスク》
- 一人現場の実態が把握しきれず勤怠が曖昧になる
- 不正打刻や改竄が発生しても見抜きにくい
- 給与計算期間の残業が慢性的になる
自己申告による勤怠管理は有効なのか
勤務形態の複雑なビルメンテナンス業では、未だ多くの企業が人の手による勤怠管理を行っているのが実情です。
厚生労働省の『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』では、労働時間の適正な把握のために講ずべき措置として、「始業・終業時刻の確認及び記録」があります。
その原則的な方法として、使用者が自ら現認する方法と、タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録を基礎として確認・記録する方法の2つが挙げられています。
実は、手書きの出勤簿などの自己申告制は、原則的な方法として認められていないんですね。
では、自己申告による勤怠管理は、有効と言えるのでしょうか?
結論から言うと、無効ではありません。
ただし、ガイドラインでは「自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置」として、企業が講ずべき措置が細かく示されており、厳しく取り扱うことで客観性の確保を図っています。
そもそも、このガイドライン自体、自己申告制の不適正な運用により発生する過重な長時間労働・割増賃金の未払いといった問題を改善するために制定されたものですから、当然と言えます。
自己申告制は無効な方法ではありませんが、やむを得ない場合の代替手段と考える方が良いでしょう。
また、DX化やコンプライアンス遵守が叫ばれる昨今において、アナログな勤怠管理のままでは時勢に対応することが難しく、デジタル化・システム化は喫緊の課題です。
デジタル化を阻む「一人現場 × 高齢者」の壁
一人現場の救世主・GPS打刻
ビルメンテナンス業のように一人現場の多い業種では、勤務先にタイムレコーダーを置いて打刻する一般的な勤怠管理システムは不向きです。
多数ある現場に1台ずつ機器を設置するのは現実的ではありませんし、莫大なコストがかかってしまいます。
そこで注目されたのが、携帯やスマホのGPS機能を利用して位置情報を取得できるGPS打刻です。
これにより、誰が・いつ・どこで打刻したのか、システム上で管理できるようになります。
ビルメンテナンス業と高齢者
厚生労働省の『令和4年賃金構造基本統計調査』(政府統計の総合窓口[e-Stat])を見てみると、他の職種における従業員の平均年齢が43.2歳であるのに対し、ビルメンテナンス業の場合、「警備員」51.1歳、「ビル・建物清掃員」55.0歳、「居住施設・ビル等管理人」56.1歳、と高めです。
ビルメンテナンス業は、若い人が少ないという問題がある反面、定年後のセカンドキャリアとして注目されている業界でもあります。
60歳以上・65歳以上の高齢者の再就職が多く、年齢を重ねても、健康面および体力の許す限り働き続けられる職種であるため、業界の平均年齢は高くなっています。
高齢者とスマートフォン
ところで、高齢者はスマホを苦手とする人が多い、というイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか。
NTTドコモ モバイル社会研究所の『モバイル利用トレンド 2022-2023』によると、高齢者もスマホの所有率が高くなっていることがわかります。
しかし、スマホに対する距離感はどうかというと、スマホの操作が難しいと感じる高齢者は67.7%にのぼります。
スマホに対して「操作が難しい/難しそう」と感じている人の割合
また、スマホの利活用状況を見てみると、電話をかけたりメールやメッセージを送ることは、60代・70代でも90〜100%の人ができますが、アプリのダウンロードや削除・位置情報のON/OFF設定がわかる人は、年齢が上がるにつれグッと減少しています。
60代前半 | 60代後半 | 70代前半 | 70代後半 | |
---|---|---|---|---|
電話をかけることができる | 98% | 99% | 99% | 100% |
メールやメッセージを送ることができる | 97% | 93% | 88% | 87% |
アプリのダウンロードや削除ができる | 72% | 61% | 43% | 39% |
位置情報のON/OFF設定の仕方がわかる | 56% | 42% | 25% | 28% |
出典:NTTドコモ モバイル社会研究所『モバイル利用トレンド 2022-2023』(p252) を基に作表 |
実態として、スマホを持っていても使いこなせていない高齢者が多いことが伺えます。
しかし、一人現場向けの勤怠管理システムの多くは、GPSを利用するため、スマホでの打刻が主流です。
高齢者が多いビルメンテナンス業にはスマホ前提の勤怠管理システムが合わず、デジタル化・システム化をなかなか進められない要因となっています。
では、ビルメンテナンス業でも勤怠管理のデジタル化・システム化を進めていくためには、どうすれば良いのでしょうか。
苦手なことはしなくていい
一般的な勤怠管理システムに必要な操作
- ①打刻用アプリのダウンロード
- ②ID・パスワードを入力してログインする
※システムによっては、一定の時間が経過すると自動的にログアウトするものもあります。 - ③位置情報(GPS)をONにする
※ログイン後や打刻時など、タイミングはシステムによります。 - ④ボタンをタップして打刻画面に移動する
- ⑤出勤/退勤のボタンを押す
日々の勤務において、②〜⑤を繰り返し行います。
スマホの操作に慣れている人であれば、難なく扱える操作性です。
しかし、スマホが不得手な高齢者(2-3.高齢者とスマートフォン参照)にとって、ハードルが高いことは容易に想像できます。
苦手な操作をなくしてハードルを下げる
管理者が、他の業務もある中で打刻アプリの操作説明に割ける時間は限られています。
たとえば、打刻用アプリがすでにダウンロードされていて、起動するだけですぐに使えるものがあったらどうでしょうか?
打刻のボタンを押すだけなら、導入時の簡単なレクチャーだけで、スマホの苦手な高齢者も簡単に利用することができるでしょう。
必要最小限のシンプルな操作にしてシステム利用のハードルを下げることで、システム化への苦手意識を払拭できるのではないでしょうか。
システム化で変わる勤怠管理
客観性・正確性の問題を解決
勤怠管理システムでは、従業員本人に紐付けられた端末で打刻をするので、他者が代理で打刻することはできなくなります。
管理者は、GPSを利用した打刻位置の確認も行えるので、勤務したフリなどの虚偽申告や遅刻・早退のごまかしといった不正があれば、すぐに把握できます。
システムによっては、あらかじめ打刻可能な範囲を設定し、その範囲内に従業員がいる場合のみ打刻ができる、という機能もあります。
予定の現場以外で打刻をさせないことで、そもそも不正ができないようになります。
勤務データの修正は管理画面でしか行えないので、修正の担当者を制限して変更者の記録も残すことで、勤怠データの改竄を抑止します。
打刻忘れや超過勤務など、予定と異なる打刻があれば、管理画面上でアラート表示されるシステムもあるので、チェックもれなどのミスも予防できます。
管理者の負担も軽減
システム化することで、従業員が現場で打刻したデータがリアルタイムに反映されます。
これにより、出勤簿やタイムカードの回収にともなう作業がなくなり、打刻を一つ一つ手入力する必要もありません。
クラウド型の勤怠管理システムでは、誰が・いつ・どこで勤務しているのか、月末に限らずいつでも確認できるので、打刻エラーも早めに処理できます。
このように手作業をシステムに肩代わりさせることで、管理担当者の負担を軽減することが可能となります。
総括的なコストの削減
用紙・インク・保管用ラックなどの備品や消耗品が不要となるので、定期的に発生していた費用がかからなくなります。
システム化によって曖昧だった労働時間が正確に管理できるようになり、本来支払いの不要な非労働時間も明確になります。
適正な給与計算により、人件費のムダもなくせます。
勤怠管理の業務が簡略化・平準化されることで、給与計算期間の慢性的な残業が改善され、毎月発生していた残業代も削減できるようになります。
まとめ
余分な人件費の発生を抑えるために、勤怠管理システムの導入は有効な手段の一つであるといえます。
ビルメンテナンス業で勤怠管理システムを活用するためには、高齢従業員の協力が不可欠です。
そのためには、小難しい操作をなくしてシステム利用のハードルを下げ、導入期の不安を減らし、従業員の協力を得やすくすることが重要になります。
そうしてデジタル化・システム化した勤怠管理を定着させることで、余分な人件費の発生を抑えることが可能となるでしょう。
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