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労働基準法違反にならないためにはどうすればいい? 〜送検事案に見る違反の実態 その1〜

法律・制度
労働基準法違反にならないためにはどうすればいい? 〜送検事案に見る違反の実態 その1〜

2023年2月28日、「労働基準関係法令違反に係る公表事案」が厚生労働省のホームページで公開されました。

『長時間労働削減に向けた取組』 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/151106.html

違法な長時間労働や賃金不払いに関して、

  • 再三の是正勧告を受けても改善しない
  • 労働基準監督官に虚偽の報告をした
  • 賃金台帳等の提出書類に虚偽の記載をして提出した

など、労働基準監督官が調査を行って重大・悪質な事案と認められた場合、司法処分(送検)されます。
社会的影響力や違法性の程度を鑑み、公表されるのは一部の企業に限られています。

では、この公表事案の中で重視したいことは何か。
それは、何をもって送検されるに至ったのか、つまりは何をしたら(しなかったら)送検されるほどの違反であるのか、ということです。

労働基準法および最低賃金法の違反について、それぞれ実際の事案を見てみましょう。

労働基準法の違反

労働時間に関する違反

労働基準法に関しては、第32条の規定をはじめとする「労働時間」に関する違反が約35%と最多です。

【労働基準法第32条】
使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

《実際に送検された事案概要の例》

  • 労働者9名に、36協定の延長時間を超える違法な時間外労働を行わせた
  • 有効な36協定の締結・届出なく時間外労働を行わせた
  • 労働者3名に月100時間以上の違法な時間外・休日労働を行わせた(第36条)
  • 労働者1名に、法定の割増率で計算した割増賃金を支払わなかった(第37条)

その他の労働基準法違反

《実際に送検された事案概要の例》

  • 労働者に対し、労働条件について、書面を交付する等により明示しなかった(第15条)
  • 解雇予告手当を支払わずに労働者を解雇した(第20条)
  • 労働基準監督官に虚偽の陳述をし、帳簿書類を提出しなかった(第101条)
  • 賃金台帳に故意に虚偽の労働時間数を記載した(第108条)
  • 賃金台帳などを3年間保存しなかった(第109条)

最低賃金法の違反

悪質な賃金不払い(不払いを繰り返す、支払ったと虚偽の報告をする等)は、主に最低賃金法第4条違反として送検されます。
一部支払われた賃金があり、その支払済み額が地域別最低賃金額以上である場合、労働基準法第24条違反とされます。

【最低賃金法第4条】
使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。[後略]

《実際に送検された事案概要の例》

  • 労働者34名に、1か月間の定期賃金約900万円を支払わなかった
  • 労働者13名に、1年間の定期賃金合計約2,100万円を支払わなかった
  • 労働者1名に、11か月分の定期賃金約330万円を支払わなかった

最低賃金に関して、いくつかの留意点があります。

◆出来高払(歩合給)制
売上が少ないからといって、支給額が最低賃金を下回ると違反になります。

◆固定残業(みなし残業)代制
時間外労働に対して支払われる賃金は最低賃金に算入されないので(最低賃金法施行規則第1条)、固定残業代等を控除した賃金額が最低賃金を下回ると、これも違反になります。

◆減額特例
洋菓子店をはじめとした飲食業や理・美容業など、技術を習得するまでに年数がかかる業種では、修業中・研修中であるという理由で最低賃金に満たない賃金で就労させているケースがあります。
しかし、減額特例の許可の対象となるのは一部の職業訓練のみであるため、それらに該当しない場合は、たとえ修業中・研修中でも最低賃金以上の賃金の支払いが必要です。
さらに、減額特例の対象となる従業員でも、都道府県労働局長の許可なく最低賃金を下回る賃金の支払いを行った場合は、違反となります。

減額特例とは
一般の労働者より著しく労働能力が低いなど特定の労働者に関して、最低賃金の減額が認められる特例。
適用には都道府県労働局長の許可を受ける必要がある。

違法な長時間労働とならないために

労働時間の適正な把握

違法な長時間労働を防ぐには、まず第一に、従業員の労働時間を正確に把握することが重要です。

見落としがちですが、以下のような時間も労働時間に含まれます。

  1. 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間
  2. 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
  3. 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html

正確かつ客観的な労働時間の把握には、勤怠管理システムの活用がおすすめです。
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有効な36協定の締結・届出と限度時間の遵守

労働時間を適正に把握した後、有効な36協定が締結・届出できているかも確認します。
36協定は定期的な見直しが必要と考えられ、有効期間は1年間が望ましいとされています。

36協定は、成立以前にさかのぼって効力をもつことができません。
そのため、締結・届出が遅れて成立までの空白期間ができた場合、その期間の時間外・休日労働が違法となってしまう点に注意が必要です。

また、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がない場合、過半数代表者を選出する必要がありますが、その選出が適正でないと36協定が無効になります。

『【社労士コラム】大切な「過半数代表者」の選出 -適法な選出でない場合、労使協定は無効-』
https://japanpt.org/column/representative-majority/

働き方改革により、時間外労働の上限時間が原則として⽉45時間・年360時間となりました。
特別の事情があって労使が合意する「特別条項」でも上限時間が設定されているので、これらの限度時間を遵守しましょう。

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割増賃金の適正な支払い

割増賃金は、時間外・休日・深夜の労働時間を正確に把握した上で、正しく算定し支払わなければなりません。

割増賃金に関しても、いくつかの留意点があります。

◆出来高払(歩合給)制
法定労働時間を超えての労働分は割増賃金が必要
です。

◆固定残業(みなし残業)代制
固定の残業代が実際の残業時間から計算した金額より低い場合、不足額を支払う必要があります。また、その過不足を翌月に繰り越して相殺することはできません。

◆管理監督者
時間外・休日労働の割増賃金は適用されませんが、深夜労働の割増賃金は必要です。
管理監督者として扱っていた従業員が管理監督者に該当しないと判断された場合、それまでの時間外割増賃金や休日割増賃金の支払いも必要となります。

管理監督者とは
労働条件の決定や労務管理について経営者と一体的な立場にある者で、労働基準法にある労働時間、休憩、休日の制限を受けない。
地位に応じた相応の賃金や待遇、採用・解雇・人事考課に関する責任と権限、勤務態様などの実態によって判断される。管理職=管理監督者ではない

勤怠管理システムを活用することで、時間外・休日・深夜の労働時間もリアルタイムに管理できます。
これらの労働時間もシステムが自動で集計するので、面倒な集計計算を行わなくてよくなります。

まとめ

虚偽の記述や虚偽の報告といった改竄・隠蔽行為や、違法な長時間労働、賃金の不払いは、違法行為として処分されるだけでなく、企業への信頼・信用を大きく失う危険を孕んでいます。
コンプライアンス遵守や働きやすい職場づくりの観点から見ても、違反を見過ごすことはできません。

適正な労働時間と適切な賃金の支払いは、従業員の心身の健康とワークライフバランスの実現に欠かすことのできない基本要件です。

雇用が流動的な現代社会において、優秀な人材を確保し続けるためにも、従業員が健康かつ安心して働ける企業でありたいですね。

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