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【社労士コラム】よりよいワークライフバランスの実現に向けて ~育児・介護休業法の改正について考える~

社労士コラム
【社労士コラム】よりよいワークライフバランスの実現に向けて ~育児・介護休業法の改正について考える~

育児・介護休業法の改正から紐解くワークライフバランスの実現

育児・介護休業法が改正され、から段階的に(3段階で)施行されていきます。
令和3年6月の育児休業についての改正で、男性がこれまで以上に育児休業を取得しやすくなるようにと、新しい制度も作られました。

これまで3回に渡って、いわゆるマタハラ(マタニティハラスメント)のメカニズムと防止を中心に、働きやすい職場環境の整備について書かせていただきました。

その中で私は

  1. あらゆるライフステージにいる方が共に働く職場で、一人ひとりの立場や環境を理解し、周りへの理解を示すこと。
  2. 必要があれば国の保険制度(雇用保険や健康保険など)を活用しながら、家庭と仕事を両立させて生き生きと一人ひとりが能力を発揮すること。

この2つは職種や事業規模問わず、全ての会社にとって働きやすい職場づくりに欠くことのできない要素であるとお伝えしてまいりました。

今回は、労働に関する法令や制度を一人ひとりがまずは「知り」、対象となる方は自分が使える制度を十分に活用する(できる)ということを理解していただきたいと思います。

そして「仕事か家庭か?」という二者択一により、どちらかを諦めなくてはならない状況に陥る従業員の方が一人でも減ることを願い、新しく創設されました育児休業の制度についてお話させていただこうと思います。

育児・介護休業法とは

育児・介護休業法の制度の趣旨は、少子高齢化への対応策として、働きながらでも子育てや介護をしやすい雇用環境をつくることにあります。

会社は、育児や介護を容易にするために、育児・介護休業法に定める勤務時間等に関する措置を講じなければなりません。
労働時間「等」なので、育児休業や介護休業といった休業の他、時間外労働の免除や、所定労働時間の短縮措置がこれに当たります。

さらに、育児や介護をする従業員に対する支援措置を講ずること等により、育児や介護というライフステージにある人たちの雇用の継続や再就職の促進を図り、もってこれらの人たちの職業生活と家庭生活との両立=ワークライフバランスの実現に寄与することに繋がり、それがひいては経済や社会の発展に繋がるとされています。

これまでのハラスメント防止記事でも述べてきましたが、能力も健康な心も身体も備わっているにも関わらず、育児や介護が必要であるという理由で仕事を辞めざるを得ないということは、会社だけではなく社会にとっても痛手なわけです。

会社が一人の人材を中長期的なキャリアで雇用しつづけることで、雇用される人は会社への帰属意識も芽生え、育ち、戦力になります。無駄な人材流出と採用、一からの育成という労力と費用をかけずに済むことにもなります。
このような意味においても、継続雇用を目的とした法律や制度は非常に重要であるということをお分かりいただけると思います。

育児介護休業法は時代の変化に伴い何度も改正している

育児介護休業法は、平成4年4月1日に「育児休業法」として制定されました。
当時は従業員30人以上の規模の会社が対象で、介護に関する規定もありませんでした。

そこから介護休業の制度が加わり、全事業規模が対象となったのが平成11年4月1日。
現在の「育児・介護休業法」となりました。

現在制定されている「深夜業、時間外労働の制限」や「子の看護休暇」、「パパママ育休プラス」なども、最初からあったわけでありません。

法改正がなされた時代背景には、

  • 日本の急速な少子高齢化(合計特殊出生率は 平成17年に1.26と過去最低を更新)
  • M字カーブ問題(出産子育て期にある女性が労働市場から退出し、その労働力人口のグラフがMのように描くことから呼ばれている現象)
  • 短時間勤務制度など柔軟な働き方を支援することの重要性
  • 男性(父親)の長時間労働の是正や育児休業の取得促進などの働き方の見直しの必要性
  • ワークライフバランス実現の必要性

などが挙げられ、その都度「育児・介護休業法」も見直し改正されてきました。

記憶に新しいところでは、平成29年1月1日の改正で、最長2歳まで育児休業の再延長が可能になりました。これはいわゆる「保活問題」にも対応しやすくなったことを意味します。

子どもが1歳になるときに保育園がやむを得ず見つからなかった時、そのまま復職が叶わず結局会社を辞めざるを得なくなるという状況の回避になります。ゆとりを持った保活ができることへのメリットとなった改正です。

今回の改正内容とポイント

それではここから、今回の法改正の内容についてお話ししていきます。
今回の改正は男性も女性も仕事と子育てが両立できることが目的です。前述の通り、3段階に渡って施行されていきます。

第1段階:施行 その①

雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化

改正の目的=「制度を知らなかった」「育休が取りづらい職場」をなくす

制度について「知らなかった」とか、育休が取りづらい職場の雰囲気であることにより、対象の従業員が育休を取らない(取り損なう)ことのないような措置義務です。

今回は、従来の育児休業に加え、「産後パパ育休」と呼ばれる新たな制度がスタートします(令和4年10月1日施行。後述「産後パパ育休(出生時育児休業)の創設」参照)。
これらの休業について、利用したい従業員の申し出が円滑に行われるように、会社は次の4つのいずれかの措置を講じなければならなくなります。(1つだけでなく複数行うことが望ましいとされています)

  • 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
  • 育児休業・産後パパ育休に関する相談窓口の設置
  • 自社の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
  • 自社の育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

つまり、会社全体で育児休業の制度の周知と取得促進を図ることで、制度の不知を防ぎ、育児休業や産後パパ育休が取りやすい職場を作ることを義務づけます。
さらに、妊娠や出産(本人・配偶者)の申し出を行った従業員に対する個別の周知と意向確認も義務となります。

ここで注意すべきは、この個別の面談が、育児休業等の制度利用をさせまいとさせるような形にならないようにすることです。
制度利用を阻む、取らせまいとすることはマタニティハラスメントに繋がりかねません。

→個別の周知事項は4つ

  • 育児休業・産後パパ育休に関する制度について
  • 育児休業・産後パパ休業の申し出先について
  • 育児休業給付に関することについて
  • 育児休業・産後パパ育休期間中について負担すべき社会保険料の取り扱いについて

休業中は「ノーワーク・ノーペイの原則」により、会社から給料が払われない分、所得保障や社会保険料の納付について不安になる従業員がいるかもしれません。
育児・介護休業法のみならず、休業期間中の保険制度については、雇用保険法、厚生年金保険法に基づいた給付となっていますので、他の関連法令についても十分理解しておく必要があります。

周知と意向確認の方法ですが、

  1. 面談(オンラインによるものも可能)
  2. 書面の交付
  3. FAX
  4. 電子メール等

のいずれかによります。

ただし、③④については従業員が希望した時のみ対応可です。
産後パパ休業については、施行が令和4年10月1日からになりますので、上記措置義務のスタートも施行日からになります。

第1段階:施行 その②

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

改正の目的:有期雇用契約の従業員も育児・介護休業が取りやすくなる

現行の制度は、有期雇用契約の人が育児休業と介護休業を取得しようとしたら、休業申し出の時点で、会社に1年以上引き続き雇用されていることが条件でした。
つまり、雇用されて間もない有期雇用の従業員は休業を取得することができませんでした。

今回の改正では、この要件を撤廃し、申し出の日までの雇用期間が1年未満であっても休業取得ができるようになります。

ただし、会社によっては別途労使協定により、その会社で働き始めて1年未満の人を休業取得対象から除外するという内容を締結することができるため、この労使協定を結んでいる会社であれば取得はできません。

また、有期雇用契約の従業員の方は、生まれた子が1歳6ヶ月になるまでに雇用契約が終了することが決まっている場合は育児・介護休業が取得できないというもう1つの要件がありましたが、こちらについては改正はなく、そのまま引き続き適用されますので、これまでの雇用月数だけではなく、契約の満了日についても確認するようにしましょう。

第2段階:施行 その①

産後パパ育休(出生時育児休業)の創設

改正の目的=現行の育児休業よりも柔軟で取得しやすい仕組みを作ることで男性の育児休業の取得促進を図る

育児休業を取得した男性の多くは子の出生直後の時期に取得しており、出産後の妻が心身の回復が必要な時期に側にいたい、育児に最初から関わりたいといったことから、産後期間に育児休業を取得する男性のニーズの高さを示しています。
また、夫の家事・育児時間が長いほど、妻の継続就業割合が高く、また第2子以降の出生割合も高い傾向にあるデータも上がっています(厚生労働省:仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート 2019

そこで今回創設される産後パパ休業では、

  • 育児休業とは別に子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能
  • 申し出期限は休業の2週間前までOK
  • 分割して2回の取得が可能(但しはじめにまとめて申し出る必要あり)
  • 労使協定の締結で休業中の就業も可能

といったこれまでの育児休業よりもさらに柔軟な制度となっています。

例えば、1回目の産後パパ育休は、配偶者が赤ちゃんと一緒に退院して、いよいよ赤ちゃんとの新生活がスタートするというドキドキの大変な時期に2週間取得し、少し仕事に復帰し、その後2回目として残りの2週間分を取得するといった方法が可能になるということです。

第2段階:施行 その②

育児休業の分割取得が可能に

これまでの育児休業の制度においては、原則育児休業を分割で取得することはできませんでしたが、改正により、2回の取得が可能になります。

これはパパママ両方が対象なので、夫婦共働きの場合は、夫婦交代で、育児休業と復帰を混ぜながら子育てと仕事を両立させることもできるし、ママの復職が近づいたタイミングでパパが2回目の休業を取るなどの使い分けができるようになります。

 また、子どもが1歳になっても保育園が決まらないといった特別な事情がある場合で、前述のように夫婦で育児休業を延長するような時は、育児休業の開始日を柔軟に設定することが可能になります。
つまり、子どもが1歳になった時に夫婦で同時に育児休業を取る必要はなく、先にパパが取り、途中でママに交代することもできるようになります。

夫婦で復職のタイミングや育児休業をどちらがどのくらい取るのかといったことを十分に話し合い計画することで、子育てをしながらでも働き続けられる柔軟な働き方ができるようになるということです。

第3段階:施行

育児休業取得状況の公表の義務化

公表義務については、事業規模が従業員数1,000人を超えている企業に限られます。

内容は

  • 男性の育児休業の取得率
  • 育児休業等と育児目的休暇の取得率

についてです。

もちろんハラスメントにもより一層の注意を

これまでの私のコラムでも書いてきました通り、育児休業等を「申し出ること」、「取得すること」を理由に、解雇や退職勧奨、本人が望んでもいないのに正社員からパートへ雇用契約を変更する、といった不利益な取り扱いをすることは禁止されています。
いわゆるマタニティハラスメントの禁止です。

今回の改正にともなう育児休業の分割取得や産後パパ育休の新設というのは、従業員にとってみれば育児休業が取得しやすく、「ワークライフバランス」を考えながら休みを計画しやすい環境になると言えるでしょう。

しかし、マネージメントをする会社にとってみれば、社員が細切れに育児休業を取ることにより、その都度人が抜けて業務の穴埋めについて考えていかねばならなくなります。
休業していない社員へのフォローや業務分担の課題も出てきます。

そうすると、不公平感により

  • 「男性が育休を取るなんて」
  • 「会社に迷惑をこれ以上かけないでほしい」
  • 「育休を取るなんてワガママで勝手」

といったハラスメントに繋がる原因にもなります。

会社としては雇用環境整備の義務だけでなく、上手なマネージメントとハラスメント防止についてもますます考えていかねばならないということも肝に銘じておく必要があります。

忘れてはいけない就業規則の変更

今回は育児・介護休業法に関する法改正ですが、労働や社会保険に関する法令が改正されるたびに、会社の現行の就業規則を見直し、改定していく必要があります。
お伝えしました第1段階の改正については、令和4年4月1日までに、第2段階の内容については令和4年10月1日までに対応しましょう。

最後に

以上が、令和4年4月1日から始まる育児・介護休業の改正内容になります。

今回は育児休業についての改定でしたが、育児のみならず、家族の介護をしながら働く人もいます。
中には、「Wケア」といって、育児と介護に同時に直面している人もいます。

誰もが自分の持つ能力を最大限に発揮しながら生き生き働けること。
なおかつ、ワークライフバランスが実現できる職場づくりのためには、時代の背景と共に変わりゆく法制度を十分に理解し、その都度柔軟に対応できる仕組みづくりを会社は考え、実践していくことが必須です。

さぁ、まもなく施行される育児・介護休業法の改正に、会社も社員も備えましょう。

執筆

社会保険労務士法人 岡本&パートナーズ 共同代表社会保険労務士 山本美紀

ホームページ:社会保険労務士法人「岡本&パートナーズ」|大阪府豊中市 (sr-toyonaka.com)

大阪府社会保険労務士会所属。国家資格キャリアコンサルタント。

営業社員、NPO職員、中学高校の英語教師、大学秘書等を経て社会保険労務士に。
大学の授業や行政のハラスメント防止セミナーに登壇。実体験も踏まえ、マタハラを中心としたハラスメント防止の啓発活動を行っている。また、歌う社労士ユニットShallow Seaとして、労働・社会保険諸法令、助成金、働き方改革などのオリジナルソングを歌い、YouTubeやSNS、ライブなどでも活動中。

著書
ひよこの学習塾-社労士教室-編著「社労士の仕事カタログ」中央経済社